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サマセット・モームはイギリスのベストセラー短編小説家として有名である。90歳台の長寿でなくなったと思うが、彼の小説は大衆向けでよく売れ、財をなしたという。シンガポールにモームが小説を書くために滞在していたと宣伝しているホテルもある。
モームは、若いとき、医者の勉強をしていた。彼の唯一と言っていい長編小説の「人間の絆」は、その医学生時代の話に基づいている。
当然、医学生は死体解剖をする。そこで彼が知ったのは、教科書通りの人体がほとんどないということであった。個々の人は、皆、教科書の解剖図と比較すると、どこかずれていたという。現代医学で言えば、DNAの違いであろう。教科書のモデルは、抽象化したモデルである。
彼の小説は、この体験がもとになっていると自伝に書いている。要するに、人には典型がないという発想である。われわれは、あるお仕着せの典型を頭に描いている。モームはそれを利用し、短編小説の最後に、どんでん返しをする。これに読者は沸くのである。
例えば、牧師というだけで、われわれは、気がつかないうちにある典型を頭に描く。モームは最後に、ある牧師がとんでもない行為をするストーリーに展開する。読者はビックリする。
最近、モームの小説のことをあまり聞かないのは、意外性の多い事件が多くて、もう、小説での意外性がなくなってきたせいであろうか。
このモームの解剖図のことで連想するのはISO9000シリーズで、審査員が、自分なりの解剖図を持って、個々の企業に押し付けるのは、会社という個性がある組織を殺すことになるということだ。ISO9001は、人体に例えれば、循環機能や消化機能などの機能要求であって、DNAや解剖図までの一元化は当然、要求していない。もし、そこまで一元化されれば、クローン人間的社会となり、創造性ある社会は育たない。
サラリーマン・ノーベル受賞者田中氏も「変人」であったという。
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