| 今、東京テレビで、「カンブリア宮殿」という作家村上龍がインタビューアーになるシリーズ番組がある。平成の経済人を迎えての大トークショウである。
4月17日からのスタートで、初回のゲストはトヨタ自動車の副会長(元社長)の張富士夫氏であった。インタビューの最後の「今夜の一言」で氏は「成果主義は、上司がいかに部下を適材適所に配し、使いこなすかが大事。半分は上司の問題」と言っていた。これは成果主義にもリストラにも背を向け、いまだ終身雇用を守り続けるトヨタの考えであり、それはトヨタ生産方式の根底をなす人を育てる考えである。
トヨタ生産方式は、ご承知のように大野耐一氏が創始者である。その直属の部下として20才台の若い張氏が改善で活動する。当時の大野氏は50才くらいであろう。大野氏の直接の指導を受けた最後の世代である。そして、大野氏亡き後、張氏はさらにその考えを広める。
このトヨタ生産方式の根底をなす人の育て方やトヨタ流の上司と部下の関係を新書版に随筆風に読みやすくまとめたのが、この「なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか」(PHP新書)である。仕事の「カイゼン」を通じての人の育成である。
著者の若松義人氏も張氏と同年齢で、大野氏の直接の指導を受けた世代であるという。
平易で他企業の事例も多いが、トヨタの人財(トヨタは人材と言わないで人財という)育成方法のポイントは十分理解されるであろう。
例によって、以下のような大野語録やトヨタ語録が面白い。
「百聞は一見にしかず、百見は一行(行動)にしかず」
「わしの言う通りやるやつはバカで、やらんやつはもっとバカ。もっとうまくやるやつが、利口。」
「部下に命令なり指示を出すとき、同時に自分もその命令、指示を受けたと思って考えにゃいかん。」
「前工程は、神様、後工程はお客様」
「ムダ、ムラ、ムリ(ダラリ)」の順序でなく「ムラがあるから、ムリをして、ムダが出る」
終身雇用を貫いているキャノンも似ている。和魂洋才のキャノン御手洗富士夫社長は、23年間をアメリカで過ごす。氏は「アメリカは尊敬もしたし、偉大さを感じたが、かぶれるほどの国でなかった。」という。
カンバンなどのシステムは真似が容易である。だから、世界的に拡大している。しかし、その「ものづくり」のうらにこのトヨタ式「ひとづくり」があることを見逃しやすい。
ところでこの本では病院の改善例をあげているが、看護師のミスは看護師のせいにしていない。システムやマネジメントが主な原因である。アメリカの病院は「人はミスを犯すものである」として、看護師の責任を追及しないで再発予防の対策を重視する。トヨタ流である。日本では看護師は刑事犯になる。これでは良い病院は期待できないだろう。
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