柳生十兵衛の最後
(H18年5月4週号)

NHKの時代劇で、柳生十兵衛七番勝負のシリーズをやっていて見ごたえのある立ち回りである。十兵衛は村上弘明が演じている。このドラマでも十兵衛は無敵である。しかし、この史上最強の剣客と言われた柳生十兵衛は、何故、43才で若くして死んだのだろうかという疑問がなかなか消えず、ミスティリー好きにはどうしようもない。

「大日本剣道史」に「慶安三年三月二十一日、山城国相楽郡大河原村弓ヶ淵の上の畠において鷹狩りの時、にわかに歿す。よって奈良奉行、中防長兵衛検使の上、事済み、柳生下村の墓地へ葬る」とあるという。事故死のようだが事実は不明。

山田風太郎はこの記述をもとに無敵だった十兵衛が何故、弓ヶ淵(今の京都府相楽郡南山城村にあり観光名所になっているという)で死んだのか、小説「柳生十兵衛死す」で展開する。その終末は無敵を貫き通した最後である。うまい展開である。しかし、例のごとく、そのアイデアがあまりに奇抜なのでもっと現実的な小説展開がないかと思っていた。

時代小説家火坂雅志の初期の頃の本に、十兵衛の謎の死を扱ったものがあるということをどこかで知った。しかし、古い本である。古本屋をさがしたがない。ようやく図書館にあった。これが「柳生烈堂」(副題が「十兵衛を超えた非情剣長編時代小説」)。文庫本で平成7年の発刊である。山田風太郎の「柳生十兵衛死す」は新聞連載で平成4年の作である。

柳生烈堂は実在の人物で、柳生但馬守宗矩の四男。長男十兵衛とは異母兄弟。十兵衛は43才でなくなったので、柳生家は次男宗冬が継ぐ。三男は若くして死ぬ。烈堂が生まれたのは、父宗矩が66才のときだというから、他の兄弟とは親子ほど年令が違う。十兵衛が亡くなったときは烈堂は、まだ13才である。烈堂は劇画「子ずれ狼」の白髪に眼帯姿の烈堂とは全く異なり、体は大きいが母親に似て美男であったという。

この小説では、山田風太郎と違い、弓ヶ淵で誰かに柳生十兵衛は斬られて死んだことになっている。何故、無敵の兄は斬られて死んだのか、切ったのは誰か、烈堂が長兄十兵衛の死のなぞを追うミスティリーである。烈堂は謎を解くため、桑名、奈良、讃岐と犯人を追って旅をする。そして、ついに仇をとるが、最後はやはり、無敵な十兵衛として終わる。小説家にとって十兵衛より強い剣客を作り出すのはタブーになっているのであろう。

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