不完全な安全マニュアル(H15年11月3週号)

ある有名なビジネス雑誌を読んでいたら、ある大学の教授が、企業の安全マニュアルでも不備があるといことで、次のようなロボットの点検の例をあげていた。

それは、ある工場で従業員がロボットの検査をする際に、ロボットを囲む柵外から行うように決められているが、実際には柵内で動く様子を見ないと本当の不具合は分からず、中に入って事故を起こしたという例である。

そして、この教授は、これは悲観することはない、失敗は必ず多くのことを教えてくれるからと言っていた。

しかし、これは、おかしな考えである。ロボットが動いているときは、危険だから柵がある。それを検査だからといって柵内に入ると、ロボットが気を利かして危険のないように動くのであろうか。
それは、丁度、海が荒れていて、遊泳禁止のときに、海水の調査だといって、荒れた海に入るのと同じ心理である。急に、海は静かになると思っているのであろうか。
それは、マニュアルの問題ではなく、なにか、基礎的な日常常識が欠如している問題だ。

最初のロボット点検作業設計のとき、ロボットが動いているときに点検すべき項目は何か、その場合、安全の問題があるから、どのように点検するのかを設計する。その配慮が設計者になかったことになる。マニュアルにするかどうかの以前の、設計者の「バカの壁」の問題である。

それをロボットでケガをしたり、死亡事故を起こしたりする度に、あわてて、マニュアルを改訂したのでは、ケガや死亡した従業員は浮かばれない。このような常識的なことは、乳幼児のときから、人間は現実の行動の中から、小さな失敗で学んでいるのである。大きな失敗をした人は、大抵、生存競争に耐えられなく、早死にしているのではないか。
生き残って成人した常識のある人間が、マニュアルを作るのである。それが、こんなロボット検査のマニュアルを作るのは、「バカの壁」があるからである。重症である。

三菱重工の客船火災事故の原因は、その「バカの壁」に気がついていたから、安全マニュアルの原点にもどり、その重症の見直しをしようとしているのであろう(このホームページの新着ニュース「客船火災の真因と是正処置;H15年11月2週号」参照)