「半落ち」(H16年2月3週号)

横山秀夫のミステリー小説「半落ち」は、2003年の「このミステリーはすごい」のベスト第一位に選ばれた作品である。私は、単行本ですぐに購入したが、途中まで読み進んで、仕事が多忙で放り出してしまった。そのうちに、横山氏の作品がたくさん出版されるようになった。そして、最近、この「半落ち」が映画化され、新聞の映画評がまた、絶賛である。そのせいか、観客動員数が百万人突破だという。文庫本も出た。

そこで、思い切って、買ってあった単行本を4時間ほど、集中的に読んで、読了した。
「半落ち」とは、完全に落ちていない状態をいう警察隠語である。落ちるとは「自白」である。「完落ち」に対する言い方である。

ある現職の警察官がアルツハイマー病の妻を殺して、自首する。だから、事件は最初、単純な尋問で進み、簡単に「完落ち」となる予定であった。
私は、最初、買って読んだとき、最初の20頁ほど読んで本を置いてしまった。あまり、面白くなかったからである。約300頁の本であるから「半読み」どころか、「十分の一読み」で中断したことになる。今度、「完読み」してみると、実は、中座した直後の三十頁あたりから、本当のミステリーが始まる。もう、2、3頁のがまんであった。
ミステリーは妻を殺して自首するまで空白の2日間である。この間の自供を求めると急に黙秘するのである。すなわち、「半落ち」となった。

この2日間の謎解きが、このミステリーの中核をなす。ぐいぐい、最後の最後まで引っ張っていく。その謎解きが、最終的に感動的な結果で終わる。

映画では、この警察官は寺尾聡が演ずるが、映画評にあるように適役であろう。彼の父親の俳優宇野重吉も同様の風格の持ち主で、親子とも似ている。

読み始めて中座したスリラー小説に桐野夏生の「OUT」がある。これも映画化された。途中でやめたのは、最初から、主人公がバラバラに死体を切断することから始まり、そのホラー的なスリルに満ちた内容が薄気味悪かったからである。最初から暗いのである。
この「OUT」は英訳され、アメリカでも評価され、今年度のエドガー・アラン・ポー賞候補にノミネートされたという。
「半落ち」は英訳されたら、外国で売れるだろうか。ストーリーが国際的だから、評判になるかもしれない。