「荊(いばら)の城」
(H17年2月3週号)

このミステリー小説は、2002年に発行され、2004年に日本語に訳され、文庫本で発行された。ある雑誌で、2004年の海外ミステリーのトップに選ばれた。
作者はサラ・ウオーターズという大型新人で、多くの新人賞を得ている。この本の3年前に発行されたミステリー小説の「半身」では、35歳以下の作家に与えられるサマセット・モーム賞を得ている。サマセット・モームは故人であるが、イギリスの有名な短編小説家である。この「半身」の日本語訳は2003年に発行され、ある雑誌で2003年の海外ミステリーのトップとなった。したがって、2003年と2004年と連続トップである。

私は、昨年、この2冊を購入した。発行順序にしたがって、「半身」を読みしだした。舞台は、ビクトリア王朝時代のイギリスである。これは、いい育ちの主人公マーガレットが、テムズ河畔にある巨大なミルバンク監獄の女囚の慰問に通い始める話から始まる。たんたんとしたストーリー展開なためか、なかなか、読み進まなかった。

そのうちに、「荊の城」が2004年のベストワンになったので、「半身」を半分くらいで放り出し、「荊の城」に移った。「半身」は文庫本1冊だが、「荊の城」は上下2冊である。
「荊の城」のほうがサスペンスの展開が速く、テンポがあり、途中でやめられず、一挙に読み終えた。
「荊の城」の主人公は、「半身」の女主人公と違い、ロンドンの下町に住むスリ娘である。
これが、荊の城をめぐる大きな詐欺の話をもちかけられ、これにのることになる。この詐欺が成功するかどうか、ストーリーは、次々に意外の展開をしていく。

2つとも舞台はイギリスのビクトリア王朝時代を描いているので、イギリスの歴史を感覚的にイメージとして描くことができる。

2作とも、同じ翻訳者であるが、日本語として、わかりやすく、すらすらと読める。名訳である。
なお、原題と日本語の題名とは異なる。「半身」の原題は「Affinity」で「親近性」「類似性」という意味である。この題名の意味が分かるまで読み進んでいない。
「荊の城」の原題は「Fingersmith」である。この単語は一般の辞典にない。スリの意味だという。スリは指を器用に使うので「指(finger)の鍛冶屋(smith)」という意味からきているのだろうか。