JR西日本の事故で、日本と欧米の鉄道の比較がマスコミで登場していた。
朝日新聞では、日本の鉄道時刻の正確性が何時から生まれたかの歴史を述べている専門家の記事もあった。しかし、下記のように、マスコミでふれていないことがあった。
1.イギリス人に教えてもらった鉄道ダイヤ
鉄道ダイヤ作成は職人芸である。線引き屋と称する専門家たちが、泊り込みで定規を片手に線を引き、ダイヤを作っているシーンが、戦後間もないテレビで放送されていた。
しかし、このダイヤは、日本人の発明ではない。私は、30数年前に、どこの出版社からの刊行か忘れたが(中公新書かもしれない)、新書版でダイヤの歴史を読んだことがある。私の専門が生産管理なので、日程管理の観点から鉄道ダイヤの歴史を知りたかったためである。その本では、確か、明治に日本に鉄道がしかれたときに、イギリス人の専門家が来て、ダイヤの作り方を教えてもらっていると書いてあった。だから、欧米の列車のダイヤのほうが先輩である。欧米の小説にも、列車ダイヤに遅れるという場面は出てくる。
昭和天皇の弟の高松宮殿下は、若いとき、小説を読んでいて、「列車に遅れる」という文の意味が理解できなかったということをどこかの対談で言っていた。何故なら、皇族が汽車に乗るときは、皇族の到着に合わせて列車がいたからである。
2.順法闘争と鉄道の安全
30年ほど前に、JRの国鉄時代に「順法闘争」というよく意味の分からない言葉があった。当時、国鉄労働者は国家公務員だから、ストライキ権がない。そこで、組合側が考え出したのが、合法的な枠内でストライキと同じ打撃を与えるものとして、「順法闘争」を考え出したという。
闘争では、安全運転と称して、減速、停止を頻繁にやる。電車が遅れる。運休も出る。ストライキと同じ効果となる。東京都心や都心に向う過密ダイヤ路線では、ラッシュ時は、順法闘争で電車が遅れると大変な混雑となり、これが何日か続いた。ついに、怒った多くの乗客が駅を占拠するという「上尾事件」が起きた。乗客は、安全とともに、定時運行も要求していたのである。
これは裏返しすると、当時、「順法闘争」以外の日の通常運転は、運転者の判断で安全と定時運行をはかりにかけていたことになる。これは顧客である乗客からすると、次元が違う品質項目で、本来、安全が最優先で、その上にたった定時運行である。
組合側の論理が正しいとすると、安全を犠牲にしないと、ダイヤを守ることはムリだということになる。しかし、そうなると「順法闘争」でない日は、安全でないことになる。
要するに「順法闘争」とは分けのわからない言葉である。
自動車の部品は、約2万点の部品からなるというが、その中で、安全に関する部品は、重要管理部品として厳しい管理が要求される。もっとも、重要管理部品を製造している下請けに、ムリなコストダウンを要求すると、経営に苦しむ下請けが管理の手抜きをすることがある。押し付け的な、技術的な改善の裏づけのないコストダウン要求は、危険である。 |