野口聡一さんと甲野善紀さん
(H17年8月2週号)

テレビで宇宙ステーションでの野口さんの活動を報じている。
野口聡一さんは、いわば技術の最先端にいる人である。宇宙服の姿である。
一方、甲野善紀さんは、日本の伝統的な武術の研究家である。いつも和服姿である。
実は、この二人はつながっている。面白い取り合わせである。

野口さんは、以前、ディスカバリーに乗る前に、甲野さんを訪問し、いろいろ話を聞いたとのこと。船外活動で、定められた時間内でいろいろ体を動かすからだ。
野口さんが甲野さんに、最初あったとき、甲野さんが腕の力だけで打ち込んできた竹刀を受けることができたが、次に打ち込んできた竹刀を受けたら、大柄な野口さんが後ろにふっとんだという。そのときは、甲野さんの力の入れ方を変えたのである。甲野さんは今年、56才。170センチで62キロだから、痩身である。しかし、甲野さんは、子供時代は、体育は平均より下であったという。別に運動の天才ではないらしい。

甲野さんは、現代のマニュアル化は、人のロボット化であると反対している。人間とはもっとすばらしいものだという。昔の日本人はもっと体をうまく使っていたという。
甲野さんの理論は体得しかない。自分で体を動かし、自分の頭で考え、試行錯誤するしかない。人の動きを見て、まねながら、自分の動きを考え、テストするしかない。

「幕末に来日した欧米人が驚いたのは、子どもがのびのびと大人と一緒に過ごしていることだった」と甲野さんは言う。
そういえば、イチローも父親と小さいときからキャッチボールをしていたという。

甲野さんのいうことを聞くと、宮本武蔵などの剣豪小説の描写も変わってくる。時代劇での体の動きも変わってくる。時代劇の俳優は、甲野さんの指導で、もっとすごい立ち回りをする必要があるかもしれない。映画監督は、甲野さんの指導を受けたほうがよいだろう。

それにしても、安全問題の底には、近代化した設備とは逆に、低下する人の能力のアンバランスがあるような気がする。それが甲野さんのいうマニュアル化の危険性なのであろうか(このコーナーの審査/コンサル経験談の4.審査/コンサル一般論の「回転扉事故:安全とマニュアル化:H16年5月4週号」及び「品質、環境問題に関する社会問題」コーナーの「事故多発と『バカの壁』:H15年10月3週号」参照)。