| 私は、三十才台半ばで、コンサルタントになったとき、専門分野は製造にしぼった。大きな理由はコンサルタントとして企業側に提案するとき、その改善効果が正確に予測できるからである。例えば、レイアウトを変えると、今まで運搬歩行が1日100歩であったのが、10歩に減少すると計算でき、かつ、実施結果は大体その通りになる。
とろが、営業のコンサルタントの場合はそうはいかい。提案した改善による売上効果を予測しても実施効果は別である。30年ほど前、タレントの大橋巨泉がパイロット万年筆のコマーシャルで「はっぱふみふみ」というなんだか分けのわからないセリフを言った。ところが、これがヒットし、パイロット万年筆の売上は激増し、業績が好転した。誰がこれを予測したであろうか。消費者は気まぐれであり、ライバルの出方も不明確でもある。いわゆる競争モデルである。当たるも八卦、当たらぬも八卦になる。ギャンブルに等しい。
私の知人の営業コンサルタントが、1970年頃、ある会社のコンサルティングをしたときのことである。彼は、その企業の過去の売上を分析して、その伸びと日本経済の設備投資の伸びと相関があることを見出し、当時の政府の長期投資予測とリンクさせ、その会社の数年先までの明るい売上予測数字を社長に提出した。社長はその数字を見て「そんなにきれいに当たるかな。」と言って相手にしなかった。コンサルタントの彼は「社長は数値的なセンスがない。」とこぼしていた。しかし、2、3ヵ月後にオイルショックとなり、その会社の売上は激減した。数字予測は見事に外れた。だから、営業コンサルタントはやばい。
老舗の小さな食品メーカーがあった。若い2代目社長が、営業売上を伸ばすため、営業コンサルタントを雇った。その営業コンサルタントは、「こうすれば、売上が3割伸びる。」と提案した。しかし、1年たっても売上は伸びない。社長の追及にコンサルタントは「私の言う通りにセールスマンが動かないからだ。」と言い訳をした。セールスマンは動いていたが、競争相手が新戦略で攻め込んできたのである。結局、コンサルタントは断わられた。
ISOで「持続可能な成長」をできるマネジメントモデルを作るとのことであるが、経営は教科書通りやれば、成功を保証できものでもない。スーパーのヤオハンが、30年位前にシンガポール進出のとき、マーケッティングの教科書無視と批判されたが成功し、ある経済評論家からべた褒めされた。しかし、そのまま、中国に展開して破産した。
アラーは世の中には勝者と敗者があると言ったという。平家物語で盛者必衰の理とある。
スポーツでは記録は破られるために作られる。ジャイアンツはV9で終わった。
終身雇用制で「持続可能な成長」をしている会社もある。リストラ策に切り替え「持続可能な成長」をしている会社もある。真実は「勝てば官軍、負ければ賊軍」ではないか。
20年くらい前、ハーバードビジネススクールはケーススメソッドの集積により、成功する経営の共通法則を確立しようとしたが、結局、成功の共通原理は、奇抜なものでなく、簡単な「常識的なもの」であるとなり、諦めたという。
「持続可能な成長」ができるというおごりが、かえって、「持続可能な成長」を妨げることになりかねない。「バカの壁」の養老教授同様、少年時代、神風が吹くと信じ、ひと夏のうちに裏切られた世代としては、「万能薬」を宣伝して、本質は高級詐欺にならないことを望む次第である。 |