マイケル・クライトン「恐怖の存在」(State of fear)
(H17年12月3週号)

このホームページの息抜きコーナーの1.一般的な社会及び政治問題の「ディ・アフター・トモローを観て:H17年1月4週号」でふれたマイケル・クライトンの「State of fear」の和訳が発刊された。マイケル・クライトンは、3年ほど、地球温暖化の文献を見て、疑問に思い、この小説を書いたという。だから、その参考文献の引用は膨大である。
タイトルは「恐怖の存在」と訳され、早川書房からの出版である。11月6日の朝日新聞の日曜書評に大きく載っていた。
この「恐怖の存在」という言葉は意味が深い。
以前、ベストセラー「バカの壁」の著者・養老孟司氏が食欲、性欲は限界があるが、お金の欲は限界がなく、逆に「不安」も限界がないとあるエッセイで書いていた。この不安が政治的使われると戦争になったりする。
ベトナム戦争は、ドミノ理論による不安から生まれた。これは世界がドミノのように、共産化するという「不安」の理論である。しかし、今、ご本家のソ連すら崩壊している。
この「不安」がこの題名の「恐怖」に相当するだろう。
この「恐怖の存在」の題名は、ドミノ理論と同様に「地球温暖化」という拡大する不安が政治的なものであることを示している。
原書は、2004年発刊であるが、ペーパーブック化したのは、今年の夏である。話は、2004年の5月2日のパリから始まり、同年の10月15日の太平洋の海底で終わっている。
この後、今年はじめ、インドネシアの大津波があった。

日本人では薬師院仁志氏(帝塚山学院大学文学部助教授)が、2002年に、同様に地球温暖化論に疑問をもち、「地球温暖化論への挑戦」が出版された。マイケル・クライトンと同じ頃、同じ疑問を持って、マイケル・クライトン同様に専門でない文科系の分野であるが、本を発行した。マイケル・クライトンは、小説を書いて発行した。
養老孟司氏は、薬師院氏の本を読んで地球温暖化論は穴だらけとして、発行当時のエッセイに書いている。朝日新聞の書評では、これらにふれていなかった。不勉強な書評である。

今、地球温暖化は、ブームである。しかし、バブルのように、皆が何かを信じているときは、危ないということであろう。疑ってみるという知性が不可欠であろう。
政府は、海の水面が上がるための被害対策として、予算をとるというようなことを聞いた。まさに、マイケル・クライトンの「ジュラシック・パーク」で、恐竜のDNA禁止法が検討されたという話を思い出す。ある人が「それはお話だよ。」と言ったら、取りやめになったという。「不安」や「恐怖」は際限がないので、政治的に使われやすいという小話である。