ISO9000と生産性
1.品質マニュアルの完成
 最近、新聞で[ISO9000ムダとり名人」というコンサルティング・プログラムの広告があり、せっかく、ISO9000を取得したのに、無駄な書類の山、嘘をつく従業員などの弊害が多く、これが企業の生産性を低下している例が多いことを指摘して、そのムダとり指導を行うことを宣伝している。このような指導がビジネスになるということは、それだけISO9000シリーズ導入に問題が多いことを示している。
 本来、ISO9000シリーズは、品質の安定、向上を目指したものであり、生産性向上につながるはずである。しかも、日本は品質の良いことは世界的に立証されている。 それなのに、ISO9000シリーズになると何故、問題を起こすのであろうか。
 このような原因は、どこにあるのであろうか。ここに当研究所の考えを明確にして、その指導アプローチを同時に明らかにしておきたい。
1.ISO9000の品質管理の本質
 ISO9000の品質管理は、正確には、品質に関する企業全体の「マネジメント・システム」としての品質管理である。全社業務について「どの部門で、どのレベルの職制が、いつ、何を(決定、指示、報告、確認など)」するかの職務分担や責任権限、相互の情報手段を明らかにし、それにより効率的なシステムを設計し、実行し、その実行を継続維持することである。
2.日本型品質管理の特徴
 これに対し、ここ約30年来の日本の品質管理は、QCサークル活動を中心とし、どちらかというと、マネジメント・システムというより「全員参加のお神輿かつぎ」的な品質管理であった。したがって、品質管理の専門というと統計的手法、測定工学、信頼性工学、小集団活動などの専門家であった。
 そして、生産性の向上は、設計部門や生産技術部門が(IE:Industrial Engineering)などを駆使して行い、企業全体のシステムの効率化は生産管理部門と協同してコンピュータ部門がMRPなど(最近は,ERS)を導入して行ってきており、品質管理部門は、ややもするとこれらの厳しいコストダウンの活動の蚊帳の外であった。したがって、統計的手法の訓練も必要悪的なコストとして考え、本当に効果を上げているのかの厳しい評価に乏しかった。
3.2つの品質管理のミスマッチ
 ISO9000シリーズは、品質管理の規格だからと短絡的に日本型の品質管理の専門家が担当することが望ましいということになった。このため、工場の神経機能である生産管理は、中核とならなかったり、コスト、納期にも追われる設計部門ともかみ合わず、形式的なシステムが、追加になっただけとなるケースが増大することになったと思われる。
4.総合的な知識・経験とコスト意識の必要性
 ISO9001の2000年改訂では、「品質システム」が「品質管理システム」に統合される。日本訳は、従来の品質管理との区別のため、「品質マネジメント・システム」となろう。この機にマネジメント・システムの真の理解が必要であろう。そして、製品の品質と同様にマネジメントシステムでも世界の模範となるべきであろう。
 なお、イギリスは、ISO9000シリーズ先進国であるが、最近、あるイギリスのコンサルタントが、ISO9000シリーズはかえって、欧州の品質の競争力を失う原因となっているという本を出し、「ISOニュース」に7・8月号に紹介されている。そして、全体的なシステムという観点から見直すことを提言しており、これは、当研究所の生産管理ベースの導入や2000年大幅改訂の考えと通じるものがある。