ISO9000シリーズ、イギリスで反対論登場
 ISO本部で発行している隔月刊の「ISO9000ニュース」の1998年の7・8月号には、「ISO9000に対する反論」という興味ある記事が載っている。本来、ISO9000シリーズを推進すべきニュース誌がその反対意見を掲載するというふところの深さを示している。この記事は、イギリスのバンガードというコンサルタント機関の取締役でありコンサルタントであるジョン・セドン氏からの寄稿である。
 イギリスは、ISO9000シリーズの先進国であり、数万の事業体が認証を得ているという。したがって、いろいろなケースがあると考えられるが、同氏は、それらの内、数百社の調査事実に基づいて、意見を述べており、ISO9000シリーズを廃止することにより、ヨーロッパは、品質の競争力を回復し、かつ、強化されるだろうと極論まで述べている。そして、デミング博士の業績や日本のトヨタ生産システムの例を効果的な品質管理の例として挙げている。
 しかし、同氏が悪例として挙げているISO9000シリーズの文書の官僚主義とか、検査重点主義、経営全体の効率を忘れた品質管理の部分最適化などは、ISO9000シリーズの規格自体よりの問題よりも、それを運用する企業の品質保証部長、審査機関、指導するコンサルタントの問題に原因が多い。
 例えば、LANというソフト会社の悪例が挙げられている。このようなソフトの会社では、顧客の要求変更が多い。これに対し、ISO9000シリーズの「4.3 契約内容の確認」という条項により審査機関は、変更の都度、顧客のサインをもらわないと、審査合格をしないとしたという。このため、顧客を失うことになったという。そこで、社長は、顧客の変更要求の書類を隠すために、女子のトイレに破り捨てることにしたという。何故なら男子の審査員は、女子のトイレには来ないからである。この場合も、規格の曲解であり、コンサルタントや審査機関の運用の問題である。同氏は、このようなISO9000シリーズの問題点を改善する方向として次の提案をしている。
「まず、組織体を1つのシステムとして見ることである。上から下に押しつけるのでなく、外から見た組織全体の観点である。企業の組織は、流れに基づいたもので、機能によって、構築されたものではない。」
 これは、換言すれば効果的な品質管理システムの構築には、生産システム全体から見ること、生産管理のプロセスの流れで見ることということの強調であり、当研究所の導入方法と同じである。ISO9001:2000年版の改訂は、従来の機能的な規格構成から、企業全体のプロセス重視の規格構成に大きく変えている。その点は、いろいろな間違った運用から反省して改善を行っているといえる。
 しかし、同時に、いかなる規格も人の運用の問題があり、品質保証部長としては企業に貢献するためには、そのような間違った運営に陥らないように積極的に幅広い、知識・経験の獲得が必要であること、視野の狭い品質管理コンサルタント、文書偏重の審査機関の選択をしないことなどの必要性をこのセドン氏の調査は示している。先例から学ぶ事が賢明である。