| 1・ヨーカ堂、トヨタは「取らない」 |
| 日経ビジネスの10月25日号から3週にわたり3回継続して特集された「こんなISOはいらない」を興味深く読んだ。最後の「ISO自体も、それを取り巻く環境も、常に変わり続ける。取る企業の側がしっかりとした軸足を持たなければ、ただ振り回されるだけだ。」とあるように、現実を踏まえており、単純なISO楽観論ではない。 |
| 環境ISOであるISO14001の取得を止めたヨーカ堂、ISO9001をテスト的に取った下山工場の後、ISO9000の取得の必要性を認めなかったトヨタ。一方、ゴーン氏のもと、リストラをしている日産がISO9000の取得を推進してきたのとは皮肉な対照である。 |
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| 2.富士重工のリコール問題 |
| これは、リコールすべき不具合があったのに、責任者に伝えず、情報を抱えていたため、ついに運輸省の立ち入り検査から約150万台までのリコールに発展した問題である。明らかに、品質システムの問題であり、ISO9001の問題である。ところが、この日経ビジネスの取材に対する当事者の回答は全くそれが分かっていないことを示す。トヨタの結論も分かる気がする。 |
| (1) |
富士重工の回答 |
| ISO9001を取得している富士重工の品質保証本部幹部の回答は、「――ISOで定めたマネジメントの仕組みに問題がなく、そこに介在した一部の担当者が『リコールする必要がない』と判断して上に情報を伝えなかった。人の判断の間違いまでもISOではチェックできない」というものであったという。 |
| このような決定権をそのレベルの人の判断に任せているマネジメントシステムが問題ではないか。ISO9000では、「是正処置」とその効果確認を要求している。マネジメント・レビューも必要である。その違反である。アメリカの自動車ビッグスリーの部品業者へのISOであるQS−9000では、異常問題は最高責任者に直接連絡するようなマネジメントシステムを強制している。全く、ISO9000の無知としかいいようがない。 |
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| (2) |
審査機関の回答 |
| 当然、審査機関であるラインランド技検は、ISOの要求を満たしていないので、サーベイランスで『是正勧告』を要求する義務がある。これをしていない。その理由を審査機関であるラインランド技検のハインツ副社長が回答している。「――ドイツでは、政府の委託で我々が検査するケースが多いが―――日本では政府が検査している。―――監査責任は政府にあるはずで、我々が企業を裁くことはできない。」というものであるが、全く、製品審査と品質システム審査の初歩的な混同である。これでは、品質保証体制があると消費者に代わり審査している意味が無い。これは、ラインランド技検のドイツ本部のテュフは、車検を民間委託されているので、製品試験の業務が多い。それとの混同であろうか。 |
| いずれにせよ、これでは、高い費用を出してISO9000を取る意味があるのかトヨタでなくても疑問に思うであろう。 |
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| 3.書類山積・偽造、過大な権限、現場の疲労感生む歪んだ目的 |
| ゼネコン準大手A社の例は毎月第2、第4土曜日はISOの日であるという。それは審査に備え、偽造の書類を作る日であるという。これは、私もいろいろなサブコンに行くと、「大手の人は大変です」ということを聞くのでかなり一般化しているのではないかと思う。逆に、サブコンがISO9000を取得しようとすると、サブコンの現場はそれを知っているだけに、自社がISO9000を取ろうとすると「そんな無駄な事をするのは嫌だ」と抵抗する原因になる。 |
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| 4.審査のバラツキの問題 |
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キャスター製造業の「ナンシン」の例 |
| 3回目の記事で、「ナンシン」の例がある。 |
| ナンシンは96年に準備したが予備審査で「製造現場にジュースの空き缶が置いてある」などの指摘を受けたという。そこで、予備審査を2回受けたが同じような指摘なので、コンサルタントに相談したら、十分合格できるということで、無駄な文書を捨て、半年後の99年3月に別な審査機関で取得したという。社員は喜びよりは「無駄な書類を作った2年の努力はなんであったのか」という空虚感であったという。 |
| ISO9000では、審査レベルがバラツカないように138の項目があらかじめ明示されており、審査員は、それを逸脱して過剰要求できないことになっている。「製造現場にジュースの空き缶が置いてある」ということ自体は、138項目にないので、これはこれを指摘した審査員が問題である。「良品は不良品と区別すること」は138の要求の中にあるが、そのジュースの空き缶が、その会社の製品と関係ないなら、アドバイスはできるが、審査で不適合にはできない。 |
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審査員の発言の制約 |
| ISOには、審査員が守るべきISO10011という規格があり、それでは余計なことは言ってはならないことになっている。アドバイスも企業側の要求でしかできない。 |
| 先のアメリカのQS−9000の規格では、職場の清潔、整理、整頓を強制要求事項として含めているので、この場合は「ジュースの空き缶」は問題になるが、逆にISO9001では問題にならない。審査員の個人的な趣味に過ぎない。しかし、ナンシンの例のようにほとんどの審査員がこれを守っていないようである。ISO10011−1では、審査員は不適合にするには、必ず、それに抵触するISO9001の条文を明記することになっている。それをしないから、過剰になる。また、それを要求しない弱腰の企業も問題である。 |
| こんな審査状態が、品質では世界第一と言われる日本で蔓延しつつあるのは恥ずかしいことである。 |
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| 5.総合感想 |
| イギリスに、セドン氏というコンサルタントがおり、全く同じ弊害がイギリスにあることを著書(「品質を追及して」和訳なし)にしているが、これを読むと、まさにイギリス版「間違いだらけのISO9000シリーズ」である。氏は、ISO9000シリーズでは品質問題は良くならず、従業員に真の品質でなく書類のごまかしを教え、モラル低下を起こし、かえって、品質管理を悪化させると言っており、トヨタをほめている。 |
| イギリスは、ISO9000の認証事業体は、数万と言われ、日本の10倍である。その2の舞を踏むべきで無い。彼は「品質に自信があるなら、それをデータやシステムで顧客に説明すればよい。デタラメな第三者認証のISOはいらない。どうしても、商売上審査を受ける必要があるなら、最後の方法は良い審査員を選ぶことだ。」と結論している。 |
| どうもISO9000先進国のイギリスの情報が少なく、私は、彼と文通したが、一度、イギリスに行き、イギリスの企業の実態を直視したいと思っている次第。とりあえずの解決は、審査員のレベルアップと、企業側の毅然とした近代的な姿勢の2つである。 |
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