H12年 年末号
1.A社のISO9001取得の失敗例
 1999年が暮れようとしている。今年は、日本では、ISO9000取得事業体が、1万を超えた年でもある。しかし、急速な取得は、多くの問題を個々の企業に与えており、効果的に取得した企業、 犠牲になった企業も多いようである。それは、経営者の資質の問題が多い。A社もその一例である。
(1) 予備審査の問題
 11月末に本審査を受けたA社は70人ほどの企業である。10月に予備審査のとき、審査員は、「単に、ISO9000をとるだけでは、だめである。効果のある品質システムを確立することが必要である。そのためには、ISO9004−1などを読んでおく必要がある。」と言ったという。これは審査員としてはタブー用語である。ところが、社長は、よくISO9000ルールを知らないので、図に乗って「そうだ。皆、審査員の先生の言うことをよく聞いて、吸収しなさい。」と言う始末。さあ、審査員は、いい気になり、不適合とアドバイスが滅茶苦茶になった。内部品質監査員は、8時間程度の研修で資格を与えているが8時間は少ないとして、「不適合」にした。どこにそんなISO9001本文があるか。また、会社全体を歩いても、2〜3分で端から端までいける小さな会社なのでマニュアルは1冊であるが、2〜3人の職場にも配付がないという。そんな職場でマニュアルは見ることはない。それがマニュアルの配付が現場にないと不適合にした。どこにそんなISO9001本文があるか。そういう品質に関係のない審査員個人の文書過剰要求の典型審査となった。社長は「あの審査員は人格者である」とほめて、不適合の指摘内容を見て、これは、最悪の審査員であることは明らかであった。後で、管理責任者に聞いたら携帯電話をオンにしており、審査中かかってきたという。
(2) クレームの回答と本審査
 そこで、予備審査の終了とともに、その審査機関のトップに文書でクレームをつけた。返事は「貴社の社長が、改善のコメントを要求したので、コメントをした」というものであった。管理責任者が「本審査はあなたの機関を断ることも検討している。」と言ったら、審査員の態度が急に変わり低姿勢になった言う。ところが、本審査で、社長がまたオープニング会議で、「今日は、審査の先生のご意見をよく聞きーーー」とまた、発言したと言う。そして、管理責任者がおかしい不適合は、サインしないつもりでいたら、社長が「全部、サインして、審査員に逆らわず、早く、認証を得るように。」と指示した。管理責任者は、無駄な是正処置をするのを承知でサインするはめになった。
 この社長は、ISO9000は管理責任者に任せきりで、管理責任者も社長とのコミュニケーションがよくなかった結果であった。そして、社長は、ISO9000をその内容でなく、ステータスシンボルで、営業活動上、宣伝に早く使うことだけにしか理解していなかった。こういう問題は、大手企業でも多い。社長が品質保証部長に任せきりで、品質保証部長は、自分の責任なので、審査機関に媚びて無理してISO9000を取ろうとすることになるからである。本当に責任をはたすなら、良いシステムを確立すべきである。
2.工程設計のその後
(1) 工程設計は設計ではないという審査員
 設計には、工程設計があるということは、大きな議論になった。しかし、これは、常識的なことである。常識を持たない人が、勉強もしないで、設計管理の審査を行うので、工程設計を無視して問題を起こすのである。菓子類やテッシュの紙容器を作っている企業が、日本のある審査機関に工程設計を設計管理として申請したら、拒否された。ISO9000本部では、含まれると言うガイドラインがある。これを示しても「ガイドラインでは審査しない。」と言うナンセンスなことをいったと言う。これは、ガイドラインのような高いレベルの審査をしないと言う意味であり、ISO9000本文の解釈には従わなくてはならない。ガイドラインでも、全世界の投票で決定しているのである。審査員の狭い、経験知識よりはるかに信頼性が高いのである。ところが、若い30才代半ばの主任審査員が、「設計管理を審査にきた。図面はどこにある。」とイキリ巻いたという。管理責任者が「それは貴方の個人的な意見ですか」と聞くとそうだという。2年ほど前の話である。
 大した審査員である。
(2)  ある審査機関の笑い話
 当時、別な審査機関では、こういう工程設計も立派な設計であると審査部長が言った。ところが、この審査機関で、プラント設計しか経験がない審査員H氏が、実務的に工程設計がわからない。しかし、上司が言うので、「工程設計も設計である」と総論を言っていたが、各論の審査では、「工程表」や「機械操作手順」は設計でないと言い出したという。分かっていないのである。例えば、料理屋では、調理方法の決定は工程設計である。そのうち、ある工程は以前からの調理方法を繰り返し使うことがある。これは、電気、自動車でも、以前の部品を共通して使うことがある。
 ある企業で、このような繰り返し性の強い工程は、特注の都度、文書化するのは意味がないので、これは、先に共通工程文書として引用した。ところがH氏は、特注の文書が共通文書より後からできていて設計と矛盾するとして「不適合」指摘したという。全部、新しいものしか設計アウトプットでないことになる。プラント設計が抜けきらないことを示した結果となった。しかし、その審査を受け、システムを変える企業のほうは迷惑なことである。
(3) ISO9000:2000用語
 2000年改訂で「設計」が用語定義に追加になる。最近、発行された草案では「要求を一連の特定の特性や完成品実現工程の仕様に変換する一連のプロセスである。」となってきている。ISO9000の発足以来、工程設計を設計でないとした人々は、どうするのであろうか。興味があることである。しかし、一方、自分の長年やってきた仕事が工程設計であるということを理解できないで、アマチュア審査員に押し切られた企業側も不勉強であるとも言える。