中小企業の品質マニュアル(H12年3月2週号)
1.中小企業の品質マニュアル集
 最近、ISO900に勉強熱心なある小企業(約20名)を訪問した。この企業は、「中小企業のためのISO9000:ISO/TC176よりの助言」を最初に読んでいた。通常,市販のいろいろな本を読むのに、いきなり、本部の本を読んでいた。これは正解であった。その知識をもとに、インターネットで検索し、多くの情報から、このISO本部の解説書に最も近い、当研究所にコンサル依頼があった。
 その企業に伺う前に、最初、マニュアルの文書量の問い合わせがあった。私は、「基本的に50頁から60頁くらいである。」と説明したら、その企業の担当部長より「ある中小企業向けのマニュアル集を買ったら、それより少ない。」と言われた。私は「それは管理規定を別に作るシステムであるようだ。私の場合、小企業では管理規定は不要であると考えている。」と返事をした。
 後で、その企業に伺ったら、その中小企業向けのマニュアル集があった。見ると何社かの中小企業のマニュアルの例が掲載されていた。それは、マニュアルの4.1から4.20の各項目の最後に、関連規定が列記され、管理規定は別に作るという大手企業型マニュアル方式であった。管理規定とか管理要領を20ぐらい作らなければならないことが明らかであった。私の予想は的中した。
 どうして、このように中小企業にも大企業向けの紋きり型のマニュアル事例集が登場するのであろうか。それは、ISO9000を本文にもどって、よく理解していないからである。
2.品質マニュアルのISO指針
(1) 管理規定の引用方式は1つの選択肢
 品質マニュアルの作り方で最も権威があるのは、「ISO10013 品質マニュアルの作成の指針」である。これはISO9001/2の本文「4.2.1」の参考6に明確に「品質マニュアルについての指針は、ISO10013に示されている。」とある重要な指針である。管理規定を何故、機械的に作るのか。それは、ISO9001/2本文で、「4.2.1」で「品質マニュアルには、品質システムの手順を含めるか,又はその手順を引用し、」あるので、この「引用し」からきているのである。しかし、これは、この文の後半であり、1つの選択肢に過ぎない。メインは最初の「品質システムには品質システムの手順を含める」である。品質システムの手順とは、品質管理の手順である。管理手順である。当然、「ISO10013 品質マニュアルの作成の指針」でも、「場合によっては、関連する品質システム手順書と品質マニュアルは、同一のものとなるかもしれない。」とある。これが小企業になると、管理規定ゼロになるという根拠である。この指針をよく読んでいない。事実、私も、大企業、中小企業のマニュアルや管理規定を自ら作成し、編集してきたが、ある大企業でも、購買業務が簡単なので、購買はマニュアルで十分となり、購買管理規定は作らなかった。結局,管理規定は14になった。大企業でもそういうときがある。このように、機械的にすべての項目に関連規定をつけるのは、マニュアルを作るのは簡単であるが、管理規定で苦労する。中小企業はそこで、行き詰まる。
 ISO9000先進国のイギリスは認証した事業体に中小企業も多いためか、その中小企業の指針も出ている。有名な指針は「小企業の品質システム」(日本規格協会訳)である。ここでも、品質マニュアルについて「品質マニュアル、管理規定、作業手順書の配分にこだわることはない。」としている。しかし、出来合いの文書を参考にして、文書を作るのは手軽である。知恵がいらない。そこで実例を参考にする。中小企業のためのマニュアルと称して、大企業型と同じパターンを掲げることになる。しかし、後で文書過剰に苦しむことになる。
 ある中小企業で、コンサルを使わないで、自ら勉強してISO9001を取得したというので、参考にマニュアルを見せてもらったが、大手型である。苦労したので取得したときは感激であるが、後が大変である。苦労して立派な新車を購入したが、後の維持費を考えていないのと同じである。その企業には立派な工作機械があるが、これは、専門メーカーから購入したものである。機械のほうは専門の知識を購入し、品質システムの文書化は自前というのは、アンバランスである。文書化はその企業にあったものを開発する専門的な仕事である。
(2) 管理的な手順書と技術文書の分離
「ISO10013 品質マニュアルの作成の指針」には「一般に品質システムの手順には、詳細な作業指示書に通常記載されるような純粋な技術的詳細事項は含めない。」とある。管理的な手順と技術文書との分離である。
 したがって、品質マニュアルで引用があるのは、組立図、部品図、加工手順書、検査手順書のような技術文書である。