ペイジごとの改訂番号のムダ(H12年5月第3週号)
1.ムダ取りでの欠落
 いろいろなISO9000ムダ取りに、不思議に品質マニュアルのペイジごとに改訂番号をつけるムダ取りがない。当研究所では、大手を含め、全企業が、ペイジごとの改訂無しで認証を取得している。イギリスのマニュアルも、6社を見たが、2社を除き、改訂番号がペイジごとにあった。国際的に似ている。これは、改訂のとき、配付先のペイジ差し替えをするから、差し替え忘れを防止するという論理が前提にあるようだ。しかし、それに対して、ペイジごとの改訂番号以外にその選択肢がないわけでなく、選択肢を増やすのがカイゼンであり、ムダ取りである。イギリス2社はその点で、別例である。
2.上書きの原則
 頁数が少なく、配付が少ないと、パソコン時代には上書きという選択肢がある。マニュアルが50頁くらいなら、フロッピーをもとに上書きとし、そっくり印刷して、旧版は1冊まるごと、廃棄すればよい。そうなると、配付があっても、そっくり廃棄だから、ペイジごとの改訂番号は意味がなくなる。まず、中小企業では配付をなくすことである。
 アークテック社は、改訂ペイジ無しで、2年前に認証を得た。ここは、従業員が15名程度で、かつ、電子媒体で閲覧するので品質マニュアルの配付がない。最初、現場に何冊か置いていたが、図面は必死に見るが、マニュアルは誰も見ない。何故なら、現場に関係ある4.8、4.9、4.10、4.11、4.12、4.13、4.14、4.15などは、日常の仕事なので、慣れると文書は不要になるからである。慣れさすことが重要なのである。
 トヨタは「教育」と「訓練」を区別する。「訓練」は日常の仕事を身に付けることで、文書配付を不要にすることである。これを理解できない審査員がある企業で「訓練記録」を見て、「訓練が少ない」と指摘した。その企業の管理者は、「今日も皆、一生懸命、仕事をしているので、訓練をしています。」と皮肉を言ったという。ISO9000の日本訳は、「教育・訓練」と教育があるので、迷う。
 4月に訪問したイギリスの40名程度の板金メーカー(トヨタ方式導入)も、認証後、文書管理のムダで悩んだ末、電子媒体にして、配付無しとし、ペイジごとの改訂番号をなくした。同じ発想である。現場を歩いたら、図面は機械に掲示して見ながら作業をしていた。よくISO9000を取るとベタベタあるような掲示はなかった。新入社員の訓練もビデオだから、文書がない。「訓練」に徹している。アークテックも見学に来る人が掲示のないのに驚くという。電子媒体でなくても、中小企業は、品質マニュアルは1冊でよい。管理者が一々、マニュアルを見ていたのでは、仕事にならないからである。自動車の運転免許がある人が、毎日、運転マニュアルを見ていては危険である。また、中小企業は全員で大企業の1係くらいの人数であるから、歩いて2〜3分くらいで1冊のマニュアルを見に行ける。
 ある70人くらいの企業があり、営業所が数箇所あった。これは、営業所に配付が必要になったが、上書き方式なので、改訂版を配付すると、表紙に捺印し、表紙をファックスで本社にコピーを送る。本社はそのファックスをファイルすることで管理した。配付管理台帳無しである。こうして、数年前から、指導した大企業を含めた20の事業体全部が、ペイジごとの改訂番号をなくして認証を得た。ムダな書類管理から開放されている。
3.JIS改訂の例
 JISの改訂例を見ると参考になる。JISZ9901:1994がJISZ9901:1998と改訂になったが、本文だけでは、どこがどのように変更になったか分からない。ところが、改訂版の「解説」が7頁くらいあり、これで改訂点が良く分かる。英語を除き、日本語だけで改訂点をまとめると、3頁くらいで明快に改訂点が分かる。事実、そのような一覧表を作り、教育に使っている企業があった。これをマニュアルの改訂ペイジとすれば、ペイジごとには改訂履歴の必要がなくなる。
 JISZ9901:1998のペイジごとに改訂番号をとったら、大変である。JISZ9901:1998の全ペイジ13ペイジ中、今回、改訂がないのは、第1ペイジだけで後は、全部どこか変わっているので、第1頁は改訂番号0を付し、後の12ペイジは、全部ペイジごとに改訂番号1をつけることになる。しかし、そうしなくても「解説」で分かる。もし、変わっていなかったなら、印刷所の製本ミスなので、読んでいればすぐミスが分かる。改訂のたびに、「解説」をつけたほうが、正確に改訂が伝達され、ムダがなく、効果的な自主性ある管理ができる。
 慾を言うと、この「解説」で問題なのは、英語は同じなのに、「何故、日本訳を変えたのか」という「解説」がないことである。例えば、「品質についての責務」を「品質に対する経営者の責務」に改訳している。誤訳修整なのか、より正確にしたのか不明である。「責務」とあるから、「経営者は、品質についての最終責任を有する。」などと、「最終責任」という理解に苦しむ用語が、品質マニュアルに登場する会社がある。責任・権限を明確にするという趣旨のマニュアルに、責任・権限のあいまいな日本型用語が考え出される。これはあいまいな日本語の「責務」から来ているようだ。ついでにいうと、責務にあたるcommitmentは、ISO14001:1997では、「約束」と訳されている。このほうが分かりやすい。改訂理由を付することにより、より良く、改訂の趣旨が伝達できる。ユーザーフレンドリーである。