「責務」の意味(H12年5月第4週号)
 ISO9001の「4.1.1 品質方針」で「品質に対する経営者の責務」とある。これは、英語のコミットメントの訳である。しかし、日本語の「責務」が一人歩きして、「社長は品質についての最終責任を持つ」とか「品質についての全責任は社長にある」などとマニュアルに書いている例が多い。中には、そういう文章を要求する審査員もいるとのこと。1つ1つの顧客クレームに社長が責任などとれない。無理である。一体、「最終責任」とは、どういう意味か。具体的にどういう行動をすることなのかあいまいである。
 5月15日の朝日新聞夕刊の「21世紀の旗手」というコラムで、6月に日産自動車の社長に就任予定のカルロス・ゴーン氏の記事が掲載されていた。
 ここで、コミットという用語が出てくる。その意味がよく分かる。ここに引用する。「ゴーン氏がよく使う言葉を解説した『用語集』が社内でまとめられた。『コミット 目標の達成を責任を負って約束すること』『タスク 何をいつまでに、が明確な課題』中でも『コミット』を最も多く使う。逃げないで責任をはっきりとろうとする姿勢だ。自身も来年3月期に黒字転換できなければ、日産を去るとコミットしている。」「最終責任」や、「全責任」とは大分異なる意味である。環境のISO のISO14001では、「4.2 環境方針」のb)とc)で最高責任者のコミットメントが出てくるが、「約束」と訳されている。具体的で分かりやすい。責任は後のことであるが、コミットメントは、これからの行動の約束である。勝負の姿勢の表明である。「広辞苑」第5版の「責務」では、「責任と義務。また、責任として果すべきつとめ。せめ。つとめ。「―を果す」」とある。責任とほぼ同じである。
 上記のコミットに近い日本語は「公約」である。名著「中小企業のためのISO9000・ISO/TC176からの助言」では、「品質に対する経営者のコミットメントは、目に見えるもので、逃げないで積極的であるのがよい。例えば、品質方針書に会社のオーナーが署名し、これを公に提示する方法がある。これによって、従業員と顧客の双方に対してオーナーが品質についてのコミットメントを示すことになる。」とある。すなわち、「公約」である。
 上記の文章中のコミットメントを「最終責任」に置き換えると、意味がおかしくなる。「約束」とか「意思表明」とかに置き換えると明快である。