| 1.マネジメントシステムの不在 |
| 乳製品は厳密な衛生管理が必要なので、特にアメリカ生まれのHACCPという管理手法がよく適用される。特に、貯乳タンクは管理上、重要工程である。しかし、この手法の問題点は、ISO9000と異なり、マネジメントシステムが明確にないことである。この点から突っ込んだ報道記事が少ない。この貯乳タンクのバルブの洗浄を毎週することになっていたのが、3週間していなかったという報道であるが、この場合、毎週しているかを「誰が」確認することになっていたのか(管理する)が報道されていない。その役割分担を明確にするのが社長や工場長の重要な仕事であるが、それが明確であったのかどうかが、また、報道されていない。ただ、抽象的、感情的な社長責任論である。新聞記者から「社長は誰にそのバルブの洗浄管理を指示したのか」と問うべきであった。ISO9000では、経営者責任に組織任命の責任を明確にしている。 |
| 今回、問題になったのは、大阪工場であるが、日野工場の貯乳タンク3基を東京都衛生局が点検したら、1基がHACCPで要求している手順書と手洗浄記録がなかったという。これもそれを直接、管理するのは現場課長なのか、係長なのか明確でない。こういう現場責任が不明確な場合、問題が出ても、トップ層に正確な情報が行くのが遅い。現場作業者任せであるからだ。これは例の東海村の臨海事故と似ている。 |
| それから、事故後の記者会見のやり取りをテレビで見ると、出席者は現場に行って、バルブの現物を見て、現場で納得いく理解をしてから出席していないようだ。だから、十円銅貨などというその場の想像で答えるから後で問題になるのである。記者側も「社長は現場に行き、バルブを見て、かつ、その場で技術的に納得できる説明を得たのか」と3現主義で対応しているかを聞くべきであった。そうでなかったなら、記者側も正確な答えを期待できないはずである。7月6日の新聞報道では、社長は現場には行っていないということであった。 |
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| 2.TPMとの関係 |
| これとよく似ているのが、設備の故障予防にTPM(Total Productive Maintenance)を導入している企業である。たまたま、TPM賞をもらった後、ISO9001取得に取り組んだ2つの企業の支援をしたが、業種も規模も異なる2社に共通した問題があった。それは、TPMで「自主保全」ということで、作業者が機械を決まった間隔で点検するのであるが、チェックしていないという問題であった。チェック方法は点検チェックリストがあり、これをチェックするのである。私が現場で、任意にそのチェックシートを抜き打ちに見たら、毎日やるのに、1週間くらいチェックしていないものがあった。これは、2社とも共通していた。目の前に、班長がいるのに、班長は関心がなく、それをダブルチェックしていない。「自主」であるからだ。 |
| 2社とも、ISO9001をとるときに、チェックシートを「4.9 工程管理」のg)の要求に対応して利用し、同時に、これは毎日、班長がサインして確認するようにし、月単位で課長に回り、課長がチェックするというマネジメントシステムとなった。これは、当然、年2回の内部品質監査チェック項目の1つとなった。 |
| HACCPの運用にもマネジメントシステムとのリンクが必要である。雪印は、結局、HACCPの認証を返上することになる。先の荏原製作所のISO14001と同じことになった。 |
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| 3.トヨタ方式と現場の「自主管理」 |
| ISO9001でよく問題になるのは、作業者の目の前に掲示される「作業標準」である。しかし、作業者は誰もこの掲示を見ていない。身についているし、作業に集中しなくてはならないからだ。4月に訪問したイギリスの自動車部品工場でも、デジカメできれいに写した作業の写真を各作業者の前に掲示していたが、作業者は誰も見ていなかった。国を超えて共通している。放置していると、「作業標準」を守らないという問題を起こすことになる。ISO9001の「4.9 工程管理」のc)の要求の不適合である。 |
| トヨタ方式では、これらの掲示は、「作業者でなく、監督者が見るものである」としている。その理由は「作業者は1日何回も繰り返しているので、身につくので、見る必要がない。」として、それを守っているかは、監督者の役割であり、監督者用に掲示していると、合理的に明確にしている。ただ、掲示したり、チェックしたりしておけば、カッコウがよいという無駄な考えとは無縁である。 |
| ハウス食品のISO9000取得支援のときに、この考えをもとに、作業標準の遵守管理は製造課長の職務であり、1日5作業をサンプリングして、文書通りの作業であるかを記録するシステムとしたことがある。ISO9000は、管理システムである。現場作業者に負荷がかかるようなシステム導入は間違いである。マネジメントシステムの意味が理解されていない。ISO9000で、仕事が増加するのは、社長以下、現場の監督者までの管理者である。 |
| 今回の雪印をはじめ、臨界事故でも、多発する医療事故でも、マネジメントシステムの姿が見えない。共通しているようだ。 |
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