医療過誤対策とISO9000(H12年8月4週号)
1.アメリカの医療過誤対策:「T0 ERR IS HUMAN」
 この新着ニュースの今月(8月)第1週号で、7月5日、6日の連夜、NHKテレビで放送した「医療過誤」特集をとりあげた。このテレビ番組で、「T0 ERR IS HUMAN」というアメリカの健康管理品質委員会でまとめた本が紹介された。この題名を訳すと、「人は間違いを犯す者」となろう。副題は「より安全な健康システムの確立のために」とある。(行3) この本によると、アメリカでは、病院での医療過誤による年間の死者は、推定で98,000人とのことで、交通事故の約4万人、肺ガンの約4万人、エイズの約1万6千人よりも多いという。この本は、細かい事実調査と、そして、その対策を述べている。その対策の5原則は、製造業の工程改善とほとんど類似している。
2.医療サービスと工程設計
 病院の「製品」は医療サービスである。しかし、その製品設計の内容は、医療サービス活動の内容と同じである。すわなち、工程設計が製品設計となる。この点が一般の製造業と異なる。「T0 ERR IS HUMAN」の改善5原則の1つに「工程設計(Process Design)における人間の限界の配慮」がある。いわゆるポカヨケである。最近、日本でも、医療過誤の増大に備え、多くの病院で、事故報告書制度や、ヒヤリハット報告を導入している病院も増えているようであるが、まだ、対策に「注意する」「確認をもっとする」「徹底する」という人間の力に頼るものが多いようである。これでは、折角のヒヤリハットの情報が生かせない。
 まず、医療サービスの工程設計という概念が必要で、次にその設計のデザインレビューや設計検証、設計の妥当性確認が必要である。その際に、「工程設計(Process Design)における人間の限界の配慮」がチェック項目になる。ISO9001の「4.4 設計管理」は、製品設計だけだという、考えでは、病院に効果的なISO9000は導入できないことになる。
3.医療の品質保証と品質管理
 医療過誤を少なくするというのは、病院にとっては、品質保証になる。すなわち、患者の信頼を得ることになる。医療過誤が少ないというのは、サービス品質が高いということである。品質向上には、品質管理が効果的でないと不可能である。ISO9000は、よく最低の品質保証の規格だという。しかし、最低というのは明確でない。この水準の医療過誤は許容できるという規格はありえない。常に、改善を行う品質システムによって、医療過誤は減少するし、患者に対する品質保証になる。病院に医療サービスの質を保証するために、ISO9000を導入したとして、上ばかり増加して、かえって、医者や看護婦の負荷になったのでは、医療過誤は減らないし、かえって、増加するかもしれない。最低の品質保証の目的では導入できないことになる。これは、一般の企業でも同じである。品質に関係のない書類の増加を目的としたISO9000でなく、品質向上を意図したISO9000であって、はじめて「最低の品質保証」が患者に対してできるであろう。しかし、それはすでに「最低」ではない。勲章代わりのISO9000を取得したのでは、病院は、またまた、医療過誤を起こすことになろう。