設計と製造の違いと設計インプットの意味は?
(H18年3月2週号)

A 氏: このホームページの新着ニュースの「製品実現のプロセスの区分管理:H18年2月3週号」の議論は興味があったよ。設計コンサル業種は、設計アウトプットが製品になるという特殊性から、ISO9001:2000のシステムを設計するときに、「7.3 設計・開発」の正確な理解や解釈が特に要求されるのだね。

私 : 電気、自動車のような製造業種だと、ISO9001:2000の適用がスムースだが、設計コンサル業者になるとちょっとひねって適用することになるからね。

A 氏: ここでまず、大きな問題になっている1つは、「7.3 設計・開発」と「7.5 製造及びサービスの提供」の違いだね。
私 : 簡単に言うと、設計は、その活動を開始するときに、到達すべき製品内容の明細がわからないことだ。それに対して、製造は、その活動を開始するとき、到達する製品内容の明細が明確なことだ。
そこで、頭の体操だ。殺人事件が起きて犯人を特定する刑事の行為は、7.3か7.5のどちらかね?

A 氏: 最初、刑事がスタートするとき、犯人は不明だ。設計活動のように試行錯誤で犯人を次第に特定する。だから、7.3と思うね。犯人が特定されている逮捕の活動とは違うね。逮捕は7.5かね。そうすると、刑事活動の設計のアウトプットとは何だろう?

私 : それは、現実に起きた犯行を証拠に基づき詳細に再現することだね。逮捕し、送検し、裁判官を説得できるストーリーを作ることだ。

A 氏: なるほど。もう1つ、地質調査と設計の関係だが、これは、どう解釈するのかね。
さっきの刑事の例だと、聞込みや科学捜査研究所(科捜研)などの調査データなどから総合的に判断して犯人を特定する。それらのデータに基づいて、刑事が判断していく。地質調査と設計の関係は、この科捜研と刑事の関係と似ているようだね。

私 : 以前、「科捜研の女」という沢口靖子主演のテレビシリーズドラマがあったが、彼女が犯人を特定するような活動をすると、担当刑事の反感を買う場面が多かったね。

A 氏: あのドラマに出てくる刑事は、「判断するのは俺たちで、君はこちらが要求したデータをきちんと決めれた手法で処理し、提出すればよいのだ。」というセリフをよく言うね。ところで、これらの科捜研からのデータは刑事活動(設計)へのインプットではないの?土木設計の地質調査と同じように―――。

私 : 「7.3.2設計インプット」は、設計開始時、設計担当者に示される内容だよ。刑事がスタートするときの「なんとか事件の犯人特定」がインプットだ。設計開始後、設計途中での設計者に必要に応じて逐次提供されるデータと混同しないことだ。
重要な問題は、「誰が」設計者のインプットの明確化行うか。ここに設計インプットの深い意味がある。

A 氏: 君の考えでは、それはマネジャー、すなわち、管理側でやることだと言うわけだ。

私 : そうだね。鵜飼モデルだと、「鵜」がインプットが明確になってから活動を開始しているかを「鵜匠」が管理するわけだ。地質調査は「鵜」の活動の1つだ。だから、インプットが先で次に地質調査となる。「鵜」が「鵜匠」の指示なしで、勝手に動くことは管理不在だ(このHPの基礎知識コーナーの「品質マネジメントプロセスと製品実現プロセスの関係質疑・その1/2・A氏とのやりとり:H17年8月5週号」参照)。だから、本来、「7.3 設計・開発」は、「鵜匠」が行うことを決めたもので、「7.3設計・開発管理」と「管理」をつけるべきだよ。
工作機械メーカーHでは、顧客が、営業を通じて試作を依頼してくるが、いつの間にか、設計が始まるものがあった。すなわち、設計部長のインプット確認が明確でないまま、いくつかの設計が行われていた。そこで、ISO9001取得のとき、コンサル依頼があったので、設計者が顧客に試作結果を説明に行く段階まで進んだときを設計開始とし、そのとき、インプットを明記した「設計・開発企画書」を設計部長が設計担当者に発行するというルールを決め、「鵜匠」の役割を明確にしたことがある。

A 氏 94年版では、「4.4設計管理」と「管理」があった。内容的には2000年版と94年版はほとんど変わらないのに、2000版ではタイトルの「管理」が削除された。

私 : タイトルだけでない。94年版の「4.4.1一般」では「製品設計を管理し、検証する手順を文書に定め、維持すること」と4.4.2から4.4.9までの項目について「管理」することが明記されていたが、この項も削除された。逆に、「7.3.1設計・開発の計画」に「管理すること」の文章が追加され、かつ、インターフェイスにマネジメント(運営管理)が追加された。

A 氏: ということは、2000年版では、7.3.1にしか、「管理」や「運営管理」の明記がないということになる。7.3.1だけ管理すればいいということ?あいまいになったね。

私 : 原因は、2000年版はPDCAモデルを使ったことにあると考えられる。この違いを絵で描くと、下図のようになる(このHPのISO9001項目別分類の8.2.2の「製品実現プロセスの監視及び測定と内部監査の重複関係:H16年1月2週号」参照)。