H社の品質・環境の統合審査
(H18年7月1週号)

H社は、30人位の規模の企業で、顧客より支給された部品で組立を行い、それを納入している。ISO9001:2000とISO14001:2004を統合したシステムで審査を受けることになった。審査機関はE審査機関を選んだ。設立して3年くらいで比較的歴史が浅いが審査費用が安いからであった。
審査機関の案内によると、第1次審査は書類だけとなっていたが、ISO14001:2004だけ現地に審査に来るということであった。支給品の組立だけなので、環境問題は通常の家庭なみの程度である。だから、事前に来社した営業マネージャーがISO14001:2004の審査費用を低く見積もったのである。
H社の社長は、その審査の意味に疑問を持ち審査機関の事務局に理由を聞いた。即答できなかった。また、審査員の履歴を要求したら、事務局はそんな要求を会社側からされたのは始めてであると回答して、あわてて、簡単な経歴書を作ってFAXしてきた。
H社は、私のHPの審査/コンサル経験談コーナーの4.審査/コンサル一般論の「審査機関の選択ポイント:H13.7月2週号」にある5ヶ条をFAXで送り、そこに審査員の経歴を送ることが良い審査機関の選択基準になっていることを示した。
後に本審査で1名追加の審査員が来たとき、標準様式で作られた経歴書が来たので、あわてて書式を整備したのであろう。

書類審査なのに、ISO14001:2004だけ現地審査に来た理由が、現地審査に来てから分かった。
審査員が統合マニュアルになれていないため、まったく、個人的な好みに合わせてシステムを変更する必要があったのである。要するにシステム変更を説得(コンサル)に来たのである。

H社の社長は審査が始まる前に、「適合性の審査」だけで結構だと言った。これが頭にきたのか、審査員は「企業の持続可能性を保証するシステムでないとダメだ」などと言い出し、小さいながら企業を作り上げてきた社長のプライドを傷つけ、激論となった。
そんな議論に時間をとられ、ISO14001:2004を見に来たと言いながら、環境側面の特定もチェックする時間がなくなった。それで下記のような観察事項と思われる項目を不適合として文書で残していった。

早速、下記のようにクレーム書が作成され、審査機関に提出された。おそらく、クレーム書を出されたのもこの審査機関では初めてであるようで、対応が悪かった。

本審査では審査員が交替し、下記の不適合は取り下げられ、認証された。
しかし、審査機関としてのマネジメントの若さが露呈した審査であった。

ISO14001:2004第1段階審査の不適合
番号
規格
条項
審査員指摘内容
当社追加説明
当社
対応
理由
1
4.1
ISO14001:2004規格では適用除外を認めていないので「7.6校正に関する項目」も除外できない。 ISO9001:200で使う計測器は顧客支給であるので校正はない。環境に関する測定はすべて専門業者が行う。
修正
不要
ISO9001:2000の除外として「7.6校正に関する項目」を除外している。ISO14001:2004との統合マニュアルを読みこなせない審査員の初歩的なミス。
2
4.3.2
法的及びその他の要求事項を特定し、参照する手順が示されていない。また、これらが当社事業にどのように関わるのかを特定する手順も示されていない。 「関連法規及びその他要求事項登録表」に規制値の記入がないこと、「環境側面/環境影響評価表」は重複項目があるので一緒にすべきであるという指摘があった。
修正
不要
文書化された手順要求はshallにないが、マニュアルに管理責任者が「関連法規及びその他要求事項登録表」に明確にする旨、手順が明記されており、実施されている。「参照」とあるのは、転記記入する意味ではない。帳票を一緒にするとかいう指摘は審査行為でない。
3
4.3.2
規格では順守評価の記録を残すことになっていますが、記録様式がない。 -
修正
不要
マニュアルにあるように「内部監査不適合報告書」がその記録様式である。
4
4.3.1
当社の製品を通じて、環境に対して影響を及ぼすことのできる環境側面(間接影響)が特定されていない。 -
修正
不要
顧客納品後の製品の環境側面は「環境フロー図」に明確に特定されている。審査員はこれを見ていない。
5
4.4.2
当社で業務に従事するに際して、必要とされる力量が具体的に明示されておらず、規格が要求する“適切な教育・訓練又は経験に基づく力量をもつことを確実にする”仕組みとなっていない。 ISO14001:2004の訓練でなく、ISO9001:2000の訓練審査にとんでいる。現在の方法で自信があるとする社長と激論となる。
修正
不要
当社は指導員制をとり、訓練用テキストと基準訓練時間を定めて、その修了者を評価して管理している。審査員の頭にある方法を画一的に押し付けるのはコンサルであって審査ではない。当社のやり方では不適合であるというshallはない。
6
4.4.6
環境マネジメントシステムの活動として、具体的に何を行うか明確にされておらず、運用管理が確実に行われる仕組みとなっていない。 運用管理は著しい環境側面に伴う運用である。当社はゴミと電力消費の減少である。
修正
不要
著しい環境側面は「環境側面/環境影響評価表」に明記してある。「運用管理が確実に行われる仕組みの確立」の手順作成のshall要求はないが、当社では基準書を作り、訓練し、目標達成を定期的に測定し、達成できないときは不適合処理をとる仕組みをマニュアルに明記し実行している。
7
4.5.1
運用管理の“かぎ”となる特性は何かが明確にされておらず、定常的に業務活動を監視測定するための手順が行われる仕組みとなっていない。 -
修正
不要
当社の著しい環境はゴミの適切な分別と電力節減なので、カギとなる特性は基準にそった正しい分別と、室内の温度設定値で明確である。この行動の責任者は管理責任者であり、分別処理は製造部門長も管理担当者であることは「環境目的・目標実施計画書」及びマニュアルで明記されており、これは管理責任者が毎月の実績で測定・監視され、品質・環境会議の定例議題で検討されている。
8
4.5.2
法的・その他の要求事項の順守を定期的に評価するための手順が確立していない。内部監査で行うとしているが、記録を確認しましたが、順守評価が適切に行われているものとはなっていない。 -
修正
不要
監査計画のときに、法令の順守責任者である管理責任者に対して第3者である監査員が「内部監査チェックリスト」でチェックする。管理責任者は「関連法規及びその他要求事項登録表」に基づき回答する。順守されていないと不適合報告書が発行される。当社は公害企業でないので、順守を監視する法令が少ない。