| PAS99という規格はBSIマネジメントシステム社が開発中の統合マネジメントシステムの要求事項の仕様である。PASとは、Publicly Available Specification(一般に利用可能な仕様)を意味する。規格レベルは、民間規格の一段階上、JISやBSのような国家規格より1段階下に位置する。将来、逐次、格があがりBS規格、ISO規格となることが予想される。
PAS99は、ISOガイド72の要求にそって、@方針、A計画、B実施及び運用、Cパフォーマンス評価、D改善、Eマネジメントレビューの6つの共通する要求事項を、PDCAのフレームワークに当てはめている。そして、共通する部分を統合するというものである。
品質、環境、労働安全衛生、情報セキュリティなどのいろんなマネジメントシステム規格に共通する要求事項がまとめられている。
将来、PAS99が規格化され、これの審査をパスすれば、他のマネジメントシステムの審査は簡素化できる。例えば、共通するマネジメントレビューを品質、環境、労働安全衛生、情報セキュリティなど、個別に行う必要がないからだ。
現在進行中の案では、今のところ、大きな問題点は、次の2つが考えられる。
1.マネジメントモデルとしてPDCAモデルを基本にしていること
これは、このホームページで繰返し、述べているように、マネジメントプロセスにはDoはない。そのこじつけがある。Doはマネジメントの対象となるコアプロセスであるから、マネジメントプロセスではない。この混乱が拡大するであろう。
2.品質と他の環境、労働安全衛生マネジメントシステムなどとの基本的な違い―――目的と手段の混同があること
PASで計画活動を統一するため、環境は環境影響へのリスク低減、労働者への災害リスク低減、情報漏えいのリスク低減などと同様に、品質についても計画を何らかのリスク低減に一本化するという発想である。これは論理的にムリである。
何故なら、品質はコア活動の目的に関係し、環境、労働安全衛生、情報セキュリティはその目的達成手段に関係するからである。背景に、コアプロセスの目的手段の混同がある。これは、1のPDCAモデルの誤用と関連している。
コアプロセスは、企業が顧客にあるもの(要求品質をもったもの)を提供するという使命を持つ。企業の基本的な存在価値である。しかし、環境、労働安全衛生などは顧客に提供する基本的な活動ではない。コアプロセス活動に副次的に発生するものである。
コアプロセスが顧客にある価値あるものを提供する使命を目的として持つとすれば、その目的を達成するための手段(方法)がある。その手段にはいろいろあるが、できるだけリスクの少ない手段を選ぶのが環境、労働安全衛生などのマネジメントシステムの計画の問題である。
簡単な理屈である。東京駅に午後1時までに着くという計画・目的が先にあり、次に、その目的を果たす手段(徒歩、自動車、電車など)が計画される。その際、環境リスク、労働安全衛生リスク、情報漏えいリスクなど、リスクの少ない手段が選択され、計画される。
この目的と手段の混同は、その底にPDCAモデルの誤用がある。最初にボタンを掛け違えるとどんどん、深みにはまり込んでしまうのは、世のならいであるようだ。
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