流れるプール事故とマニュアル主義
(H18年8月3週号)

A氏: 流れるプール死亡事故でも、マスコミですぐにマニュアルやチェックリストの有無が問題になったね。

私: まったく見当違いだね。チェックリストがないと忘れるレベルではないじゃないか。管理前にすでに死亡事故が出ている問題だよ。
吸水口の事故の対応も、事故が起きたら、すぐ、動力を停止するという訓練は、マニュアル無しで体が動くようにすべきだよ。「やって見せ、言って聞かせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ」だよ。

A氏:

そうだね。マニュアルがあれば書類ファイルで探して、それを見ながら運転を停止するのかね。ナンセンスだよ。

私: マスコミがプール担当者に取材するなら「吸水口のトラブルがあったとき、動力を停止するように、体で訓練されていますか。」だよ。
外注に丸投げしたり、アルバイトが多くても原因でないね。今回事故を起こしていることはプール監視や金網のメンテナンスなど、常識レベルのことをやっていないのが原因だよ。
責任者がきちんと外注であろうとアルバイトであろうと「やって見せ、言って聞かせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ」という簡潔な伝統的な常識的な人扱いをしていれば問題なくすむことだ。
マニュアルなど、文書で渡し、読んでおけというほうが危険だ。訓練がない。説明は2分で忘れる。しかし、責任者はマニュアルを渡したで責任は完了だ。それがマニュアル主義の欠陥だ。
どうも、今回は、マニュアル以前の基本的な仕事についての管理者と現場員の対話がないのではないの?
急成長している衣料の「しまむら」など、パートの人すら改善提案するというのにね。

A氏:

あるテレビでは、このプールの始業チェックリストを写し、それはきちんとつけられていて、そのチェック項目に吸水口のチェックはなかったと放映していた。

 

私:

マニュアル主義の典型だね。誰がチェックリストを書いたのかね。事務所で形式的に作ったのだろうね。
チェックリストには書くと会話がなくなる。マニュアルに書いてあることしかやらない。それで担当者は百点。常識的な疑問さえ考えないシツケがされる。重要なのはチェックリストの項目の相談だよ。重大なことなら本来リスト無しでもできなくてはいけない。
ここにも書類による形式主義の問題がある。そういうコメントがない。
そして、対策はチェックリストに項目を追加するで終わりだ。真の原因は不問だ。

 

A氏:

ネジがたくさんあって、掃除が大変なんで、数年前から針金にしたという話が出ているね。市でも担当者がチェックに来たが、見ていなかったらしい。設計の問題もあるのかな。

 

私:

現場をきちんと回らないで、できるだけ書類チェックですまそうとするからだね。現場主義が次第に消えているね。本当の現場を回らないから、経験が蓄積されない。感覚がないから脳化だけだ。

 

A氏:

プール設計にも原因があるかね。死亡も予想される水力だから、吸水口に金網や柵等を設置する設計をしていなかったのかね。

 

私:

掃除などの維持のことも考えて、プールの設計をしないと、こういう問題が出る。これは予防保全の常識だ。仕事の流れ全体を考えたら、ネジが多いほどいいというものでもない。
ネジがいくつかあると、一旦、外して、今度、つけるときは、全部ネジ穴がそろわないと締め付けられない。大変な時間がかかる。それが現場のシワヨセになり、楽な針金を使うなど、現場の悪知恵が出る。あるいは、ネジ穴の締めるほうは楕円穴にするかだね。位置を調整できる。
マスコミは、この点の設計への取材がない。

 

A氏:

トヨタ生産方式の段取りでは、ネジによる固定はムダな時間がかかるからタブーだよ。ワンタッチで固定する方式をとる。
コストを配慮しない品質達成は、しばしば裏切られるのは常識だよ。

 

私:

それから、このような死亡事故を起こすような重大故障は、自動的に検知して、即座に機械が自動停止するのが製造業では設計上の常識だ。新幹線と同じだよ。自動停止だ。
吸水口のフタが動いたら、機械が検知してアラームを出し、自動的に止まるように設計する。
トヨタでは「ニンベンのついた自動化」という。ニンベンとは人のことで、機械が人と同じように異常を判断し、自己停止するのだよ。だから、正確には「ニンベンのついた自動停止する自動化」だね。

 

A氏:

安全管理という抽象論だけで、マスコミは隠れた具体的なマネジメントの事実を追及していないね。

 

私: 「そんな安全管理は常識だよ」という設計者、会社の人、プール関係者へのインタビューがほしかったね。