有益な環境側目のあいまいさ
(H18年9月2週号)

A氏:

こないだ20人くらいのY社のオフィスに行った。昨年10月にISO14001:2004を取得したんだが、環境目標で行き詰ってシステムが崩壊しつつあったね。

 

私:

どういう環境目標なの?

 

A氏:

この会社は製造機能がなく、オフィス業務だけだ。だから、環境目標は設計が環境にやさしい設計を行うというものなんだ。しかし、顧客の要求が詳細なので、この会社の設計活動では材料や工程の選択肢がほとんどない。図面を作成し顧客要求内容を明確にするということが中心なんだ。

 

私:

なるほど、明らかに「紙、ごみ、電気」タイプの企業だね。その低減目標で十分ではないの?

 

A氏:

ところが、審査員はそれではすぐに種切れになるから、「有益な環境側面」を環境目標にかかげるべきだというだね(このHPのISO14001規格関係コーナーの「環境目的・目標としての「紙・ごみ・電気節減」の軽視をわらう:H18年3月3週号」参照)。
それで、「紙、ごみ、電気」をやめ、設計の材料の選択を環境目標にあげたのだ。
ところが、そろそろ一年たつが、効果はまったく出ないし、評価のしようがないというわけだ。
マネジメントシステムの中核であるPDCAがまわらないんだね。

 

私:

「有益な環境側面」という言葉が何か重要な意味になっているようだけれど、そんな用語定義もないし、ISO14001:2004に「環境目標には有益な環境側面を設定すること」というshallもないね。

 

A氏:

「有益な環境側面」というのは、なんだか、「紙、ごみ、電気」ではだめだから、もっと有益な環境目標を設定しなさいというので強調されクローズアップしたみたいだね。そういうセミナーもあるらしい。それを機械的に押し付けたようだね。

 

私:
「有益な環境側面」の強調で無意味な分析の紙が増えたり、講習会の「有害な環境側面」が増大したのではないの?
またまた、診察無しの処方箋の押付けかね。万能薬の宣伝かね。個性無視だね。

A氏:

どうも「有益な環境側面」の意味がハッキリしないのが背景にあるね。たとえば、「昼休みに電灯を消す」という活動は、環境影響を減らすから「有益な環境側面」となるという。すべての「有害な環境側面」はそれを減らす活動があるから、同じ数の「有益な環境側面」があるという理屈だね。
どうも、俺は現場感覚でこの理屈はおかしいなと直感したんだよ。

 

私:

それだと、「環境影響に有益な環境側面をもつ活動」と環境マネジメントのPDCAの基本となる「環境目的、環境目標を達成する活動」との違いが分からなくなるね。

 

A氏:

そうなんだ。冷静にまず、自社の業務の環境に影響を与える側面を評価・分析するPlanのステップのときに、もうその低減を改善するDoの検討に入ってしまっているんだよ。ゴチャゴチャだね。

 

私:

基本ステップが分かっていないためかね。

 

A氏:

「植林」は「有益な環境側面」だがその工事活動では「有害な環境側面」があるのでその差が「有益な環境側面」だなどと分けのわからない説明もあるね。

 

私:

「植林」とそのための運搬、動力の使用は「活動」が違うのではないの?植林のための運搬だろうが製品や廃棄物の運搬だろうが運搬は運搬で独立した活動だよ。そうでないと運搬のマイナスの環境影響を減少する活動が「植林」で帳消しになってしまうよ。

 

A氏:

オフィスにいる保全部門のスタッフも「紙、ごみ、電気」だけでなく、「部品交換による設備の長寿命化」、「省エネ設備の導入」という「有益な環境側面」に注目すべきだという。

 

私:
「部品交換による設備の長寿命化」、「省エネ設備の導入」は現場の設備の廃棄ごみの減少、現場の電力消費の削減という環境目標を保全スタッフの責任で一部実施を担当するというのが本来の意味だよ。オフィスの環境側面と関係ないね。
「紙、ごみ、電気」はだめだというが、すでに「設備のごみ減少」、「設備の電気使用減少」が環境目標になっているじゃないか。
お題目は勝手にどんどん書けるが、「技術上の選択肢」「財政上の要求事項」などで、環境目標達成のためのネタとして実効性あるパフォーマンスが期待できるのかね。

A氏:
どうやら、本来の業務のもつ「有益な環境側面をもつ活動」と、「有害な環境影響を改善する活動」とは分けるべきことがハッキリしてきた。

私:
設計は、品質要求を満たすために材料の選択や工程の選択などをするが、品質要求に環境影響の低減が含まれていれば「有益な環境側面」がある活動だよ。設計は品質要求の達成が基本だからね。
もちろん、環境影響を考えたら、設計部門のオフィスでも「紙、ごみ、電気」を減らさないといけない。しかし、これらの活動は設計業務の「有益な環境側面」ではないね。本来の仕事の側面でないからね。
その判定には、「その活動をやめたら会社の活動が停止するか」と質問してみればよいよ。
例えば、昼休みにまめに電気を消さなくても、設計をきちんとしてもらえば、会社活動は問題ないね。
しかし、昼休みにまめに電気を消すが、設計をしないのでは、会社業務が動かないよ。
「活動」の次元が異なるよ。
4.3.1のa)の環境側面の特定の論理が混乱するし、b)の著しい環境側面の決定の論理も混乱するね。