N社は40人くらいの地方にある精密板金業者である。
当社の指導でISO9002:1994を2000年4月に取得。次いで、2002年12月にISO9001:2000を取得した。
こうして、約4年を経過した。その間、社長が退陣し、弟の管理責任者が社長となり、管理責任者を兼任した。その後、製造課長を2003年に管理責任者を任命した。
しかし、2004年にこの管理責任者が退職し、技術課長が管理責任者となった。2005年にはベテランの品質保証課長が退職した。
この退職した2人の管理者はいずれも、ISO9001:2000を取得したとき、中心となって活躍した幹部であった。 こうした幹部の異動には、中小企業は弱いという点がある。これを社長は直感し、先月、当研究所に全面的なチェックを1日がかりでしてくれるように依頼が来た。
この間、3回の維持審査は不適合ゼロで問題なくパスしている。
しかし、社長には最初にISO9001:2000導入したときの考えと次第にずれているのではないかという懸念があったからであった。
当社が指導したシステムなので、チェックは効率よく進んだ。 日常帳票の運用は問題なかった。これはこの会社がISO9002:1994をとるときに、すでにコンピュータ化して定着していた作業指示システムを使ったからである。
問題は、不適合品管理と是正処置であった。
不適合品の処理の記録として、製造課長が処理を指示し、処理後確認し捺印後記録することになっているが、それが時々、抜けていた。
この製造課長は、ISO9001:2000以降後に入社した人であった。
是正処置の対策書も回答が遅れているものがかなり散見された。
是正処置の進捗については、一覧表で管理する手順になっているが、その一覧表は形式だけになっていた。
まだ、経験の浅い製造課長に両者の運用を聞くと、原因は書類を発行して「これを書いてくれ」という会話だけで、現場での口頭の会話が欠如していることが分かった。「関係者が現場で現物を見ながら現実的に考えて相談する」のが先で、その話し合いでまとまったことを書類にすべきであると提言した。
それがないと、書く人が一人で考えるので、仕事が忙しいと思考が中断して書くことが遅れる。結果的に書くことが目的になってしまう。書類の形式化のはじまりである。
書類作成の前の口頭による「三現主義」が基本であることを強調した。
もう一つ、ISO9001:2000の5.5.2のb)の要求に対応して、管理者が社長に報告する手段として、品質マネジメント月報があるが、この中で「品質マネジメントシステムの実施状況」という欄がある。
これにクレームの記事が載っていて、上記の不適合品の管理、是正処置の遅れなどのマネジメントシステムの運用の問題の記事がないことを指摘した。
新しい管理責任者は製品要求事項とマネジメントシステム要求事項の違いを忘れていた。
トップはせっかくISO9001:2000をとったのであるから、システムの継続性に配慮しないと形だけのものになるおそれがある。特に中小企業では配慮すべきことである。
|