「文書と記録の相違点」論議継続
(H18年12月1週号)

M氏:
社内文書の定義をこのHPの「電話帳は文書か?:H18年11月5週号」にある「自社の作成・審査・承認者が自主的に意思決定した指示機能があること。記録と異なり改訂がある。」と考えて、以下の弊社の文書・記録の考え方におかしなところがないかご意見をいただければ幸いです。
事例として「作業指示書」という弊社の書類を取り上げます。この書類の使われ方は以下の2通りがありますが、いづれの場合も記録として扱っています。
作業指示書
1. 特定ロットの作業指示
ある特定のロットのみに通常の作業とは異なる作業を指示する場合、「作業指示書」を発行する。この指示は一過性で繰り返し使用するものでなく改訂もないので記録と扱っている。該当ロットはこの作業指示書にしたがって作業をしたとして記録に残る。

2.正式発行までのつなぎ
組立手順を変更するが、正式の手順書発行までの間の緊急指示として「作業指示書」を発行する。この場合指示書の有効期限は14日間で、この間に正式版が発行される。

作業指示書そのものを繰り返し使用するものではなく、また改訂もないので、記録として扱 っている。手順書の正式発行までの間はこの作業指示書で作業を実施したという記録 が残る。

このように弊社では指示機能はありますが一過性で改訂もないものは記録として扱っています。文書として扱っているものは標準書(管理規定、手順書等)、図面などです。


私: 指示機能とは、これから開始する行動を指示する機能があるということです。記録はその指示によって、行動を行った結果の記録です。
行動前が文書(メモであろうと)、行動後が記録です。これが大前提です。したがって、文書の記載内容は「−−−すべきである」と現在で命令形です。記録のほうは「−−−した」と過去形です。
行動前に権威が必要なので承認や審査が要求されます。誰が作ったかわからない文書で作業をすることは品質上問題だからです。
例の「中小企業のISO9000」(94年版向け)では「文書と記録の間には相違がある。本質的には文書は、どのように物ごとを行うかを示し、管理するために使用され、状況の変化を反映して、改訂することができる。記録は何かの活動の結果として、生まれるものであり、その時点で、存在していた事実を述べたものであり、改訂できない。」と明確な説明があります。
作業指示書に改訂がないから記録としているとありますが、これは文書の定義になりません。文書は改訂の有無や頻度でなく、可能性をいっているだけです。
作業指示書は改訂の可能性はあります。作業前に指示内容にミスを発見すれば、まだ改訂可能です。
指示機能があるということは、一過性とか改訂がないとかいうことでなく、「作業を開始前」に「こうしなさい」として発行されるという意味です。それの内容に基づいて仕事がじっこうされます。「記録」は「作業終了後」なので、指示機能はありえません。指示された通り実行されたかの証拠となります。
ですから、貴社の「作業指示書」は立派な文書であり、承認・審査が必要です。作業後、結果が記入されると記録となります。

正式発行までの「つなぎ」で使うといいますが、「つなぎ」の「作業指示書」で作業が行われるならば、「つなぎ」の意味がありません。「作業指示書」のほうが「正式版」です。
システムがムダな形式的になっていることが考えられます。

文書と記録の関係図は私のホームページの「統合システム(成功への道)」コーナーの 「T.統合マネジメントシステムを成功させるための前提となる常識(5) 11 情報体系を確立すること」を参考にしてください。

 

M氏:

弊社の作業指示書の例ですが、作業指示書は文書で、その指示通りに作業を実施したことを記載すると それが記録となるというわけですね。

 

私: その通りです。指示内容の欄が埋まると承認を受け、作業が指示されます。その場合、当然、実施記録欄は空白です。
作業が終わると記録欄に事実が記入され、記録となります。
文書と記録の兼用帳票です。
しかし、文書と記録という一番基礎的なことで、かつ、簡単なことで定義があいまいなのは、ISO9001:2000の致命傷ですね。
ISO9001:2000やISO14001:2004の検討の段階でもふらついています(このHPのISO14001規格関係コーナーの「環境ISO / DIS 14001:2004で文書と記録の混同、ますます拡大? :H16年2月1週号」)参照)。