文書と記録の混同の最終到着点は?(H12年9月1週号)
 文書と記録の混同は、いろいろ審査の場でももめてきたが、2000年改訂で、次第に統一解釈が生まれつつある。
1.94年版の混乱しやすい例
 現在のISO9001:1994年版で、混同しやすい項目を列挙しておく。
 4.4.3 組織上及び技術上のインタフェース
「必要な情報は文書にして伝達してーーー」―――これは「必要な情報の『記録を書類』にして伝達して」である。
 4.10.4 最終検査・試験
「関連データ及び文書を作成し、承認するまでは、製品を出荷しないこと」―――これは「関連データ及び『記録の書類』を作成し」である。
 4.11.2 f)
「過去の検査・試験の結果の妥当性を評価し、文書化すること」――――――これは「過去の検査・試験の結果の妥当性を評価し、『その記録を書類に』すること」である。
 いずれも、記録である。これを理解できない審査員,コンサルタント、企業側の品質保証部門担当などは、これらを「文書」という言葉あるからとして、「文書管理」対象とする。だから、文書体系が混乱した品質システムができてしまう。
2.ISO9000:2000年版のFDIS
 ISO9000:2000年版のFDISでは、参考で次のような説明が加えられる予定。
 「文書」参考3
「ある要求(例えば、読みやすさ)は、すべての文書に関係するが、仕様書(例えば、改訂管理の要求)と記録(例えば、索引の容易性)は、異なった要求がありえ
 「記録」参考2
「通常、記録は、改訂管理の管理下におく必要がない。」
 しかし、「文書とは、本質的に、どのように物事を行うかを記述又は管理するために用いられるもので、状況の変化を反映して改訂することができる。」という「中小企業のためのISO9000:何をなすべきか:ISO/TC176からの助言」の名定義には及ばない。
 情報には、文書系と記録系がある。情報をdocumentにして、かつ、文書系情報もdocumentにしているので、下図のように混乱しているのである。総合的な新語が必要である。
「中小企業のためのISO9000:何をなすべきか:ISO/TC176からの助言」では、「文書と記録を混同しないことが重要である。」としているが、文書と記録の総称名の説明がないのが、この本の致命傷である。その総称名が例えば、information とすれば、下図のようになり、混乱は避けられるだろう。しかし、英語の歴史上の使い方があるので、割り切れないのであろう。
 私は、品質マニュアル作成に参加するとき、次のようにマニュアルで明確に定義して用いている。
 技術的な標準と異なり、管理的な標準化は、文化的な背景があり、言葉の定義が困難である。この弱点を審査上でカバーするのは、審査員の健全な常識か、企業側の強い説得的な姿勢しかないことになる。