| 1.セドン氏のISO9000批判とトヨタ生産方式 |
| イギリスのバンガード・コンサルティングの社長であるセドン氏は、1997年に、約十年来の、イギリスのISO9000の実態を見て、その効果に疑問を持ち、「品質を追及して」という本を出版した。これは、副題が「こんなISO9000はいらない」である。日本と同じように、うわさレベルでは、ISO9000はどうも紙ばかり増えてしまい、うまくいっていないというのが多いので、セドン氏は、これをISO9000は「裸の王様」に似ていると言っている。この要約が、1998年の夏にISO本部発行のISO9000ニュースに掲載された。この本を見ると、セドン氏は、トヨタ方式を基本とする日本のやり方とISO9000とは、その根底の考えが百八十度異なり、これがイギリスのISO9000失敗の根本原因であるとしている。そして、日本に学ぶべきとしている。 |
| 1999年10月の日経ビジネスの「こんなISOはいらいない」特集でトヨタはISO9000をとらないという記事が載っていたが、すでにセドン氏は、1997年のときに、トヨタ方式がISO9000に合わないということを見通していたことになる。 |
| 今年、イギリスのISO9000取得の中小企業、6社を実際に見て、そのうち、5社がトヨタ方式を採用しているのには、驚いた。いずれも、トヨタ方式を知ってから、ISO9000の文書の無駄を見直し、文書が激減したことを聞いた。 |
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| 2.「海外企業で進展する日本化」 |
| 9月16日の朝日新聞の夕刊にあるウィークエンド経済の上記の表題のゼミナールは、それに関連して、興味あるものである。筆者は、産業研究所国際研究所国際経済研究センターの松本厚治所長である。ポイントを要約してみよう。 |
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調査によれば、トヨタ生産方式などの日本式の生産管理方式は、80年代から、世界に静かに定着しつつあり、現在も進んでいる。 |
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米国産業の復活の要因として情報化が指摘されるが、それ以上に日本方式の徹底的な学習があったのである。これが十分に認識されていない。システムが同じになれば、人材、資源などで米国が優位になる。 |
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「系列」など、日本式が非難された時期があったが、合理的な面もあるということで、米国企業で導入し、それにつれ、日本非難が聞こえなくなった。 |
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欧米での大規模ストライキが減少している。これは日本システムの浸透による労使関係の変化である。 |
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システムを世界的に斉一にすることが必要だというなら、日本が世界に合わせるだけでなく、世界が日本に合わせてもよいのである。 |
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| 残念ながら、ISO9000という基準で日本は世界に合わせようとしている。しかし、現実に、上記のように、品質は日本が手本になっているのであり、その方法は世界に定着しているのに、何故、ISO9000では、受身になるのであろうか。 |
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| 3.「トヨタ生産方式のDNAの解読」 |
| 上記は、昨年秋のハーバートビジネスレビューに載っていた論文の表題である。これは、トヨタ生産方式は世界的に検討され、実施されてきたが、トヨタと同じような効果を出すまでにいたっていないことに注目し、その見えない部分、言わばDNAを解読しようという、ハーバートビジネススクールのボウエン教授の論文である。 ある人は、それは、日本文化のせいであるというが、日産、ホンダはトヨタの水準に到達していない。だから、それは、トヨタ固有の特性である。トヨタでは、厳密な作業規定と組織構造にもかかわらず、「命令とコントロール」によって、作業を管理しようとはしないという。「学習する組織」であるとしている。ボウエン教授は、4つのルールが根底にあるとしている。セドン氏も、ISO9000の根底は「命令とコントロール」の考えが基礎にあり、「学習する組織」を妨害するので、品質の向上にならないとしている。 |
| 2000年改訂の動機の1つに、イギリスでは、ISO9000登録企業の品質が改善されていないという批判が背景にあったという。2000年改訂で、今後、その反省が生かせるであろうか。セドン氏は、年末にそのコメントを本にして出版するという。 |
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| 4.隠す文化とトヨタ方式 |
| トヨタ方式は、問題をオープンにする。1980年代、アメリカのGMがトヨタに学ぶように職長を日本に派遣した。彼らがまず、驚いたのは、作業者が問題を発見すると、ラインをストップできるシステムであった。これは、問題をクローズアップするための工夫である。GMでは、そんなことをしたら、その作業者は、すぐ首である。しかし、日本でも、隠す文化がある。 |
| 国鉄時代に「丸にする」という隠語があり、これは丸秘からきていることで、現場のミスなどを上にあげないことである。トップが知らないうちに、これが大きな事故につながる。これは、三菱自動車だけの問題ではない。その意味で、福井県立大学経済学部教授は、トヨタ生産方式の変遷を詳しく調査して「トヨタ生産方式の生成・発展・変容」(東洋経済新報社刊)で、トヨタは日本式経営というのには、特殊であり、もっと日本の産業が、不況の際、これを参考にして、改善を進めるべき余地が大きいとしている。 |
| 確かに、ISO9000でも、不適合を発見するのは、第1線の作業者であり、営業マンであるが、隠す企業文化があると、「4.13 不適合品の管理」がうまくいかない。そして、これをもとに対策を立てる「4.14 是正処置及び予防処置」は、もっとうまくいかない。ところが、ここがトヨタ方式の一番応用できるところである。しかし、通常の企業は、三菱自動車のように、これが、一番問題のまま、ISO9000を認証するので、真の品質保証にならない。 |
| ISO9000で一番効果があるところは、この「4.13」「4.14」であるが、逆に、多くの企業で、一番、ISO9000の認証で定着に苦労するのがここである。その意味で、確かに、トヨタは日本では、特殊であるし、日本人自身が学ぶことが多い。そのうちに、世界のほうが先に進んでしまうかもしれない。 |
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