不適合品の原因追及の誤解(H12年9月4週号追加)
1. N社のマニュアルの「4.14.2 是正処置」
 N社のマニュアルでは、不適合発見に対応して、顧客のクレームであろうと、社内や受入検査の不適合品であろうと、「不具合票」を発行し、これが品質保証課に集中する。ここで「不良対策書」が不適合の発生原因となった部門に発行され、是正処置が要求されるという手順が書いてある。
2. 審査員の指摘
 審査員は、予備審査で、「このマニュアルでは、『不具合票』だけなので、製品だけしか扱っていない。工程及び品質システムの不適合の是正処置がない。」と指摘したという。その根拠は、ISO9001:1994「4.14.2 是正処置」のb)に「製品、工程及び品質システムに関する不適合の原因の調査及び調査結果の記録」の要求があることからきているという。だから、「工程」と「品質システム」が抜けているので、ここは「製品だけの是正処置である」とマニュアルに明記すべきであると指摘した。
3. 審査員の間違い
 このb)の日本語は直訳なので分かりにくいが、英語を見るほうが分かりやすい。意訳すると「不適合の原因調査には、製品、工程及び品質システムが関係するので、これらを調査して、記録しなさい。」と要求しているのである。審査員は、「製品、工程及び品質システム」の語句を「不適合」にかけてしまい、「原因」にかけていない。
 品質システムの不適合を問題にするなら、このb)の前のa)に「監査報告書の効果的な扱い」が必要であるが、「顧客の苦情と不適合品報告書の効果的な取扱い。」としかない。「不適合『品』報告書」と明記してある。テオニハ的な審査員には、その点、論理できちんと対応できるので、対応しやすい。しかし、品質に関係のない無駄な議論となる。
4. 常識的な基礎体験の欠如
 不良品の是正処置を取るときに、原因を追及していくと、製品(材料や、前工程の不良など)や、工程(機械の故障、作業ミス)、品質システム(連絡ミス、指示ミス)などの原因が複合している。この原因調査実務を繰り返していると、このISO9001のb)の意味が素直に理解できる。しかし、その経験がないと、文章にこだわる。テオニハ審査となり、日本語のJIS本文は英語の直訳だから、かえって読み間違いの原因となる。
5. 予防処置の場合
 ISO9001:1994では、予防処置については、「4.14.3 予防処置」のa)で「工程・作業、特別採用、監査結果、品質記録、サービス報告書、顧客の苦情」を情報源とするように書いてある。この6種類の情報源の中に「監査結果」が登場する。これに注意すべきである。だから、N社のマニュアルでは、品質システムの監査結果の是正処置及び予防処置は「4.17 内部品質監査」で定めると明記している。
 また、「工程・作業、品質記録、サービス報告書」は、毎月、不良統計が発行されるので、これを品質管理委員会で討議し、予防処置を決定するとマニュアルに規定している。残った2つの「特別採用」「顧客の苦情」の情報源は、実は、すでにトラブルが発生している情報源である。すなわち、是正処置と同じ情報源である。だから、これは、是正処置ともに、予防処置を行うこととしている。俗に言う、「水平展開」「横展開」である。「水平展開」「横展開」は、予防処置でないという説は、ここで矛盾を起こす。
 この間違って指摘をした審査員は、その後、審査機関を退職し、臨時審査員となり、独立し、ISO9000のコンサルタント事務所を開設したという。この人の指導を受ける企業は、たとえ、安いコンサルタント費用でも、どういうことになるのか、想像できる。