中小企業の管理規定ゼロ主義(H12年10月2週号)
1. 管理規定ゼロの確認
 S社は300人くらいの会社であるが、私の考えを適用し、品質マニュアルだけで管理規定がない。しかし、文書の多いのが良い品質システムだと思っている審査機関では、管理規定ゼロを喜ばないところがある。S社は、審査機関はB機関を選択した。
 B機関については、私は情報がないので、最初に確認したほうがよいと私に言われ、S社は、品質マニュアルがある程度できてから、それを持って、B機関に確認に行った。回答は、「ISO9000の規格には、管理規定という階層が必要だという要求はないので、別に、1冊でもかまわない。」と言ったとのことであった。そんな、要求どころか、ISO9001:1994の本文を見ると、「4.2.1 品質システムの一般」に「品質マニュアルに品質システムの手順を含めるか、又は、その手順を引用し」とある。
 前半の「品質マニュアルに品質システムの手順を含める」を無視し、後半の「その手順を引用し」を、小さな企業でも無駄な文書を作っているのは、おかしなことである。
 さらに、この項の参考6に「品質マニュアルについての指針は、ISO10013に示されている」とあり、このISO10013を見ると、ここにも、「品質マニュアルは、品質システム手順書そのものからなるか、又はそれを引用するものである」とあるし、「場合によっては、関連する品質システム手順書と品質マニュアルは同一のものであるかもしれない。」とある。管理規定ゼロ否定は、参考6を無視し、ISO10013を無視していることになる。
 B機関では、S社が持参したマニュアルを見て、「これなら、1冊で問題ないようです。本審査も問題ないでしょう。」というコメントであったという。これで、管理規定ゼロは問題ないという審査機関が増えた。
2. 新田製作所の1冊マニュアル
 日刊工業新聞社の「工場管理」9月号で、新田製作所(パートを含んで17名)のISO9002取得の体験記事がある。今年、2月に取得した。若い社長は、最初から1冊で当社の品質システムを分かるようにしたいということで、作成を開始したという。
 つまり、よく見られる引用方式の「どのようにするか」を下位文書にするというやり方でなく、マニュアルの中に「誰が」「何を」「いつ」「どのように」を取り込んであるという。この審査機関はJ審査機関である。
3. イギリスの3社例
 イギリスのほうはISO9000先進国らしく、苦痛の経験から、中小企業の品質マニュアル1冊化が進んでいるようだ。イギリスに学ぶべきであろう。
(1) D社
 20人くらいの板金会社である。ISO9000の前のBS5750時代に認証を取得したが、膨大な書類に悩んだ。社長が1990年頃、トヨタ方式を日本に勉強に来て、帰ってから無駄な文書を廃止し、管理規定をゼロにした。検査も自主検査に切り替えた。自動プレスや、ベンダーなどの機械が現場に並んでいたが、けばけばしい掲示文書はゼロであった。何故なら、新人の訓練はビデオなので、現場に文書はない。徹底的な文書の廃止である。品質マニュアルもパソコン閲覧で、配付がない。この中小企業はそのような苦労の上、品質マニュアル1冊に到達した。
(2) L社
 今年、3月にISO9002を取得した。ここは、40人くらいのラベルメーカーである。ここは、最初からマニュアル1冊である。これは、すでに数万という自国イギリスのISO9000登録業者の実態を見ているので、当然の方針であった。しかも、徹底的なフローチャート使用である。実に分かりやすい。主任審査員も驚いたらしく、後でわざわざ、若い審査員を連れてきて、勉強させていたという。
(3) C社
 ここも40人くらいの小企業である。数年前に、ISO9001を取得したが、膨大な書類で悩んだ。ところが、ディレクターが変わった。彼は、アメリカ支社で、日本のコンサルタントから直接、トヨタ方式を学んで、帰ってきた。そして、4月に私が訪問したときには、文書の減少に取り組んでいるところであった。イギリスでは品質マニュアルは訪問すると簡単にコピーをくれる。日本のような丸秘扱いはない。品質マニュアルは外部に示すのだから、本来社外秘はおかしいのである。しかし、この会社だけは、350頁もあったのでコピーも大変なので諦めた。
 今、これを30頁くらいの1冊にし、かつ、上のD社のように端末閲覧にして配付をやめるようにするとディレクターが言っていた。配付管理の無駄廃止を狙っていた。上記のD社もC社も自動車業界ではないが、トヨタシステムを学んだことは、偶然であるが、両社の取ったISO9000に対する行動は、無駄廃止という必然性があった。