品質マニュアルの制定日と施行日の違い(H12年10月3週号)
1. K社の場合
(1) 大手型のマニュアル作成
 K社は、20人くらいの小企業である。社長がISO9000に熱心で、いろいろな参考書を見て、品質マニュアルを作った。参考書は大手の例であるので、当然、大手型のマニュアルができた。これが、1998年の7月であった。品質マニュアルには、表紙に「7月20日制定」となっていた。しかし、大手型のため、従業員が実施できず、マニュアル通りには仕事は動いていなかった。10月に書類審査があり、いろいろ指摘があった。しかし、ずるずると1999年の1月になり、予備審査になってしまった。しかしマニュアル通りでないので、指摘も多く、本審査が危なくなった。品質方針すら、貼り出しもしていないし、徹底はゼロであった。半年近く、マニュアルは、書いてあるだけであった。
(2) 小企業型マニュアル作成
 相談があったので、調査し、システムを簡素化して、日常帳票は一切増加しないで、システム設計をやり直した。2月から4月まで実験を行い、実情に合った修正をし、1999年5月1日に完全に動き出した。したがって、新しい品質マニュアルの表紙は「施行日は5月1日」となった。
(3) 審査員の指摘
 新しいマニュアルができたということで、予備審査をやり直すことになった。それは5月末であった。事前にマニュアルを見た審査員が、「5月1日からだと、稼働日数が少ないので、審査機関の判定委員会で問題になるかもしれない。スタートを昨年の7月にして、前のマニュアルの改訂ということにして、稼働日数を1年近くに増加させてはどうか。」という指摘があった。しかし、事実は、昨年の7月から、1999年の4月30日までは、システムは完全に動いていなかったのである。稼動していなかったのである。それは、審査員も知っているのである。K社はこの審査機関を断り、別の審査機関に変え、1999年11月にISO9001を取得した。
2. A社の場合
 この企業も20人くらいの小企業である。「今年の2月」に、最初のマニュアル原案ができた。これに基づき、テストを3月より逐次実験を開始し、いろいろ修正し、5月に安定してきたので、最終的なマニュアルは、「施行日を6月1日」とした。ところが9月に予備審査に来た審査員が、マニュアルの改訂履歴欄を見て、改訂履歴がないので「準備でいろいろ改訂があったでしょう。本来はその改訂履歴があるはずだ。」と言ったという。暗に「改訂を書いてないのではないか。」という疑いの目をもって聞いたようである。しかし、試行錯誤でマニュアルを修正している時期は、準備時間だから、正式マニュアルでない。当然、マニュアルの修正は、改訂履歴とはならない。この審査員は、制定日と施行日の意味の違いが理解できなかったのである。
3. N社の場合
 N社では、今年5月から、いろいろ試行しながら、「9月」にマニュアルの素案ができた。それに基づき、幹部の研修を行い、10月より各部門で準備が開始されることになっていた。そして、完全定着を11月末目標とした。したがって、品質マニュアルの「施行日を12月1日」とした。ところが、管理責任者が9月末に審査機関と打ち合わせたとき、審査機関に参考までに、素案であるマニュアルを見せた。審査員は、「これだけ、できていれば、施行日を10月1日にしたらどうですか。」と言ったという。この審査員も、制定日と施行日の違いが理解できなかったようである。
4.制定日と施行日の混同の原因
 真面目に、かつ、フェアに審査すると、施行日が問題になる。すなわち、何時からのデータが審査対象となるかが明確にしないと混乱するからだ。だから、制定日と施行日の混同は、審査が指導型であると発生する。すなわち、審査員の言われるまま、マニュアルを直して、形だけ実行していれば、認証を与えるという暗黙の「取引き」があると、施行日の理解がなく、混同を発生しやすい。