K氏の寄せた書評「くたばれ!ISO」森田勝著・日刊工業新聞社刊・その1/3
(H19年3月1週号)

たまたま、東京ブックセンターに立ち寄ったとき、上記の本があったので買いました。
一応、読了をしましたので、贈呈いたします。
一読して感じたことは、著者が言わんとしていることは、ISOを全面的に否定することではないのです。
羊頭を掲げて狗肉を売るとなっています。
そして、同時にISOマネジメントシステムとしての基礎的な間違いが多いことも発見しました。

1.基本内容
基本的にこの本はISOのマネジメントシステムをうまく利用して、企業の利益向上に使うべきということです。
これは、長年、問題になっている適合性審査と付加価値審査の問題(注:このHPの審査/コンサル体験談コーナーの4の「審査とコンサルティングの違い:H15年8月1週号」「付加価値審査に必要な力量:H16年8月2週号」「"アイソムズ"04年12月号 特集:適合性審査とその付加価値」「審査は改善?:H17年1月4週号」、など参照)として古典的な内容で別に新しくはありません。
著者はこの2つの違いを知らないか、ISOの審査システムの初歩的なトラブルを知らないのでしょう。

2.文書体系図
72頁にピラミッド型は管理規定が必要な場合で、管理規定ゼロの場合は一体型だとして下記のような図を描いています。

この図で問題なのは、何故、ピラミッドになっているかを理解していないではないかと思います。要するに横軸は書類の量を示します。
一体型の図になると品質マニュアルは1冊ですが、業務マニュアルや基準書ははるかに多いはずですし、記録はさらに膨大となるので、ただ、階層だけを示しものとなります。
要するにピラミッド型は、書類階層とその量を同時に示したものであり、一体型は書類階層だけ示したもので、表現方法の違いにすぎません。管理規定ゼロを示す唯一の表現ではありません。
両者とも相手の表現が可能で、管理規定ゼロの場合は1階層抜けるだけのピラミッド型となるというだけです。
逐次、ふれますが、この本はこのような初歩的なミスが多くあります。

3.Shallの説明不在
審査の場で企業側と審査員の主張が異なった場合、落としどころはshallしかないのに、この話は出てきません。
ですから、「要求事項に仕事を安易に合わせる」と言い方がときどき出ます。このため、無駄なシステムができるというISO規格の批判がときどき、見受けられますが、それはshallの要求事項を著者がよく理解していないためだということが分かります。何を品質記録にするかなども、著者は迷っているようですがISO9001:2000では記録要求はshallでは、20個と明確で、迷うことはありません。他の記録は企業の自主的な判断に任せられています。
迷っているのは、shallを知らない審査員と議論して、こちらもshallをしらないため、話の落としどころをshallにしていないためだと思います。

4.6ゼロシステムとの関係
西沢さんは十数年前に中小・中堅企業の6ゼロシステム管理規定ゼロ、品質保証体系図ゼロ、QC工程表ゼロ、配付台帳ゼロ、文書番号ゼロ、頁ごとの改訂履歴番号ゼロ)を打ち出し、それを武器にコンサルをしてきました。
この本の、管理規定ゼロ、品質保証体系図ゼロ、QC工程表ゼロの3つの具体的なムダとり方法は同じです。
その動機は「規格要求にないから」です。
ところが、それなのに配付台帳ゼロ、文書番号ゼロまでは改善されていないようです。77頁の業務マニュアルの例では文書番号がちゃんとついています。
「規格要求にない」、すなわち、「shall要求がない」で一貫していれば、配付台帳ゼロ、文書番号ゼロ、頁ごとの改訂履歴番号ゼロにすぐに到達するはずですが、shall発想がないためか、どうも趣旨が一貫し、体系化していないようです。

(来週に続く)