付加価値審査の横行
(H20年1月2
週号)

「Y氏の質問」
当社は30人位の小企業です。ISO9001は94年版の頃より取得しているので、10年ほど経過しております。最初から維持審査は年2回です。
したがって、多くの審査員と対応してきましたが、当社が役立った審査員はT審査員一人でした。彼は、マニュアルにそってきちんと審査して、新人の訓練の記録が不備なことを指摘しました。そして、余計な規格や当社の実務から離れた論議は一切しませんでした。
ところが、先月に来たS審査員は、審査の冒頭でいきなり「貴社のISO9001は長いので、もう規格要求事項による審査はやめましょう。もっと、貴社の経営向上に役立つことを考えましょう」と言いだしました。
これは、最近の審査員の発言に多い傾向ですが、このS審査員は極端でした。
結果として、ISO9001:2000規格を無視したメチャクチャな審査となりました。
この審査機関は最後にアンケートを提出することになっているので、20項目くらいある質問に対して、全部、最低点をつけて審査機関に送りました。
1週間ほどして審査部長がとんできましたが、審査部長は「審査は当然、規格にそって行うべきです」と言っていましたが、審査員は無視の行動でした。
このS審査員の審査のやり方がいわゆる「付加価値審査」なのでしょうか?

「私のコメント」
そうです。これが「付加価値審査」といわれるものです。審査機関によっては「経営改善のための審査」、「パートナーシップによる審査」、「企業に役立つ審査」とか別な表現をとることがありますが、同じ内容です。
付加価値審査」とは逆にT審査員のように規格やマニュアルにそって行う審査を「適合性の審査」と言います。
本来、審査員は決められた資格を認定されて審査ができるのですが、その資格とは「規格にそった審査ができる能力」であって、経営改善をする能力は認定されていないので、本来、違法的な行為というべきです。
付加価値審査」の弊害についてはすでにこのHPで扱っています(このHPの審査/コンサル体験談コーナーの4・審査/コンサル一般論の「『アイソムズ』04年12月号特集:適合性審査とその付加価値:平成16年12月1週号号外」参照)。
日刊工業新聞社発行の月刊誌「ISOマネジメント」1月号の飯塚悦功氏(ISO9001:2000の規格を作成したISOのTC176委員会メンバーの日本代表)の巻頭インタビューに「審査機関は『付加価値審査』よりも『正しい審査』を目指すべき」として、の意見がのべられています。
氏はここで「審査機関が審査する組織の経営向上を支援するということで『売上げ』を増やしたいということは分かるが、それを第一にもってくるのはおかしい。第三者認証制度の本質を考えて『まずは正しい審査』をすることだ」と言っています。

「Y氏の質問」
しかし、経営改善に貢献する審査を「正しい審査」だとして自説を押し付ける審査員が出るかもしれません。

「私のコメント」
そうですね。だから、実務的にはshallベースの「適合性の審査」を「正しい審査」と明確に定義すべきですね。