工程設計は結論不明?(H13年1月2週号)
1. 根拠の論理性不明
 「7.3 設計及び開発」には、「製品の設計・開発」と「製品の」とあるから「工程設計は含まない。」のだという。「そう書いてあるから、そうなのだ」という議論にならない理由である。どうも弱い。誰がどう書いたのか、それが問題なのに。実は、「製品の設計・開発」であるのは、2000年改訂からでなく、87年の初版から「製品の設計を管理し」とあり、最初から「製品の設計」である。
 それにもかかわらず、長い間、「工程設計は含む」という公式見解であった。すなわち、87年版の解説であるISO9000−2:1993でも、94年の解説のISO9000―2:1997でも、設計管理の説明では、「設計管理には、製品設計とこれに伴う工程設計を含む」と一貫している。これは、全世界の75%以上の賛成で決まった指針である。ISO9000sの専門家なら読んでいるはずである。「そう書いてあるから、そうなのだ」という議論にならない理由はこれで明らかである。「7.1の参考3」により、工程設計に強制事項として7.3は適用されないと言ったほうが論理的である。
2.適用の問題
 ところが、これが一貫しない。「製品の設計には、工程設計は含まれない」とすると、品質保証上、そうでない場合も出てきたようで、今のところ、次の例があげられている。
 (1)製品設計に工程設計の影響が強く分離できない場合
 (2)プロセスが技術的に確定していない場合
3.製品設計に工程設計の影響が強く分離できない場合
 「製品設計」と「工程設計」は、一体であるが、その区分は明快である。製品設計は工程の結果できた製品の設計である。何を作るかが製品設計であり、それをどのように作るのかが、工程設計である。機械部品でも、製品図面の寸法公差は、製品設計で決めるが、工程設計で決めた工程能力で決まる。密接な関係にある。工程設計に影響を受けない製品設計はない。だから、コンカレントエンジニアリングとか、同時設計というのである。設計管理の専門家では、常識である。
4.プロセスが技術的に安定していない場合
 自動車部品は、顧客満足向上でトヨタ生産方式があるから「工程設計は含まない」とは言えない。そこでアメリカの自動車部品のQS9000では、製品設計のアウトプットに新型、新機械設備、新施設、新ゲージ・試験装置など、工程設計の中心となるものを含めている。これらは、設計管理の対象となるから、設計審査、設計検証、設計の妥当性確認が要求されている。ところが、この新型、新機械設備、新施設、新ゲージ・試験装置などの場合も、プロセスが技術的に安定しないので、ISO9001の7.1の参考2により、設計に含めるべきであるという意見があるが、参考にものすごい力をあたえてしまい、混乱する。ISO9004と変わらなくなる。これもいさぎよくISO9004にゆずるべきである。
5.ISO9001に対する日英の基本的な違い
 イギリスでは、ISO9001の取得は大変だから、設計行為があってもISO9002を取得するという例が多い。ある設計事務所が、ISO9002を取得したというので、イギリスの認定機関であるUKASのディレクターが怒ったという新聞記事があった。今回の改訂では、こういうイギリス企業は、大変である。
 ところが、日本では逆である。同じISO9000をとるなら、ISO9001のほうが格は上であるという考えで、部品メーカーでも無理にISO9001を取ろうとする。ところが、部品メーカーは製品設計の試行錯誤がない。試行錯誤は、顧客が行い、図面が来る。しかし、ISO9001を取りたいという企業側の要請にこたえて、審査機関がいろいろ知恵を出し、図面の清書行為が少しでもあると、これを「製品の設計」として無理に認め、ISO9001を認めた。
 こうしてISO9001を取得したという企業は、2000年改訂になったら、どうしたらよいか。何故なら、もう、無理しないでISO9001となるし、部品メーカーの品質の中心となる工程設計は、7.1参考に「工程に設計管理」を適用してよいと任意事項である。清書行為は設計管理から除外し、意味のない管理コストを削減するか、堂々と顧客満足向上のために、工程設計に適用するか、いずれにするかを判断すべきであろう。しかし、これは、審査員は指摘できない。企業の任意である。