| 昨年末、東京の都立病院で、点滴液と消毒液を間違えて患者を死亡させた医療事故で、看護婦2名が起訴され、執行猶予つきであるが有罪となった。これは、アメリカの処置と全く異なる。アメリカは第1線に責任をしわ寄せしない。個人名すら出さない。これは、精神論の問題でなく、マネジメントの問題である。しかし、これで現場は本当のことを言わなくなり、看護婦の志望者は減るだろう。医療の現場の質は低下するだろう。看護婦向けの保険もできたそうである。マネジメントの保険はできたのであろうか。 |
| デミングの品質向上のための14原則の第4原則にある「マネジメントは、全員が会社のために効率よく働けるよう不安を一掃せよ」と逆である。悪い知らせを持ってくる使者を殺してしまうという企業風土を変えよとデミングは言うが、これをしないと皆、黙するようになるであろう。デミングは「どんな職場でも、不安をかかえている人間は共通して、不手際な仕事をしたり、水増しした数字をでっち上げたりして損失を生む。」と言っている。 |
| 現在、点滴液と消毒液をミスして間違えないようにポカミスシステムがある。そのシステムがあったのか、それは、マネジメントの問題である。しかし、今回の都立病院の問題ではマネジメントの姿は見えない。マスコミも理解していない報道である。ようやくマスコミで登場したのは、正月テレビで「さんまのまんま総特集」である。この番組に石原慎太郎が出ていた。彼は、この問題にちょっとふれ、マネジメントの長である院長が責任をとらないのはおかしいとして、半ば、強制的に辞めさせたという。 |
| 昨年、「人は誰でも間違える」(日本評論社)というアメリカでの医療過誤対策の本の和訳が出た。「ミスを犯した個人を責めるよりも、ミスを犯さないシステムづくりの重要性」を説いている。これを訳した日本人が序文で、アメリカの医療過誤に対する姿勢が日本と大きく異なるのを遺憾に思ったと書いている。デミングが14原則を言い出だした頃のアメリカの品質はどん底であった。しかし、アメリカは、これらの考えを謙虚に取り入れている。アメリカの経済回復の根底を見逃してはならない。 |
| トヨタ方式では、生産ラインでおかしいことがあれば、すぐに作業者はラインストップできる。「悪い知らせはクローズアップする。」そして、リーダーの責任で解決する。当時、アメリカの自動車ラインでは、作業者がラインをストップさせたら、即、クビであった。だから、皆、悪いことを知っていても見て見ぬふりをした。品質は悪くなる。アメリカは、90年代にこの反省を日本から学んだ。しかし、トヨタの有名な改善提案制度は、敗戦直後、フォードに留学したトヨタの技術者が学んだものである。アメリカは、これをいつしか忘れ、1980年台にどん底になった。しかし、「人は誰でも間違える」の考えには、もう、どん底のアメリカはない。逆に、日本が、かつての品質の高さを忘れ、アメリカから学ぶ状態である。 |