| B審査機関の審査員が、94年版での審査中に、マニュアルに「契約内容の確認記録は業務課が保管する(このマニュアルの『4.16 品質記録の管理』参照)。」と書いてあったら、「これは保管でなく、維持である。修正すべきである。保管はただ、置くだけで、きちんと管理する維持とは違う。」と言い出した。会社側は「『4.16 品質記録』参照とあるので、別に問題ない。修正の必要はない。」と反論した。 |
| 実は、ISO9000には、94年版でも2000年版でも「記録を維持する。」という訳が盛んに登場する。問題になった4.3.4の「記録」に「契約内容の確認の記録は維持すること。」とある。これは英語のmaintainの訳である。これとは別に4.3.1の一般に「手順を文書に定め、維持すること。」とあり、これもmaintainの訳である。以下、「一般」には、この「手順の維持」が盛んに登場する。これは、手順の保管でなく、「手順の継続実行」である。 |
| これで明らかなように、「手順の維持」と「記録の維持」のときの維持の意味が違う。これはもとの英語のmaintainの意味が違うからである。対応する日本語にはそのような違いが無い。だから、「記録の維持」という慣れない、いかにも直訳調の日本語となる。 |
| 「手順の維持」のmaintainをmaintainAとしよう。これは、英語のcontinueと同じである。ところが「記録の維持」maintain(これをmaintainBとしよう)は、英語のlook afterと同じで「ある物を良い状態に置き、それが壊れたり、傷ついたり、盗まれないように保つ。」という意味がある(Longman辞典)。一方、日本語の「維持」を広辞苑でひくと「物事をそのままの状態でもち続けること。つなぎもつこと。『治安...』『現状...』『政権を....する』」とある。「保管」を広辞苑でひくと「大切なものを、こわしたりなくしたりしないように保存すること。『書類を金庫に....する』」とある。 |
| すなわち、maintainBのほうは日本語の「保管」に対応し、maintain Aのほうは日本語では「維持」が対応する。したがって、この場合、別に修正しないでも意味が分かればよい問題であり、業務課で、きちんと管理しているか現場でチェックするほうが重要である。俗に言う、日本語の使い方すら間違えているようなテニオハ審査の悪い典型例である。 |
| 愉快なのは、その審査員とその会社の管理責任者が昼食で話していたとき、その審査員が「テニオハ審査員は未熟な審査員に多い。」と言っていたそうである。本人は未熟でないと思っているのであろう。 |