是正処置と予防処置の関係 (H13年12月4週号)
1.一品料理の予防処置
 先週、15名くらいの小企業であるA社が94年版でISOを取得した。不適合ゼロであった。ここは、一品料理的な受注業務をしている。したがって、物件レベルでは是正処置が存在しない。しかし、業務内容は繰返し性が多い。したがって、業務レベルでは是正処置が存在する。
 興味あることは、業務内容は繰返し性が多いので、これを改善するとこれから新規に受注する物件の予防処置となる。すなわち、物件レベルでは予防処置が存在する。しかも、業務レベルの是正処置は物件レベルの予防処置と同じとなる。この会社は、この件で予備審査の段階で審査員と神学的な不毛の議論があったので、次のように品質マニュアルに用語定義を追加して、その後の議論を不要として不適合ゼロとなった。
 「製品の是正処置:当社では物件レベルには繰返し性がないので、是正処置はない。しかし、業務レベルでは繰返し性があるので、是正処置がある。」
 「製品の予防処置:当社では、業務レベルでは繰返し性があるので、業務レベルの是正処置は、新しい物件レベルの予防処置となり得る。」
2.目的と手段のレベルの混同
 ISO9000は、94年版から是正処置と予防処置を分けた。このため、両者を全く別のものと解釈した審査員が登場することになり、混乱を与えた。もともと、是正処置は再発防止、予防処置は初発防止と目的を2つに分けただけである。手段そのものの分類ではない。それを単純に、改善内容も完全に二分できると勘違いした審査員が登場した。
 目的を2つ以上果たす手段がありえるのは、目的手段関係では常識である。だから、再発防止の手段が、初発防止の手段を兼ねることは、当然ありえることである。例えば、運搬中にある製品が落下しキズがついたとする。原因を深く追求したら通路のレイアウトに問題があったとする。レイアウトという手段を改善すると、キズ未発生製品の落下やそれ以外のキズ予防になる。すなわち、是正処置と予防処置は深く原因(真因)を追及して手段の改善をすると同じになる。
 トヨタ生産方式では、不適合が発生すると5つのWHYで原因でなく、真因(手段)追求を要求する。これはそれによって、単に是正処置だけでなく、予防処置にもなる手段を考え出すためである。効果的な品質向上のため、再発予防の目的と初発予防の目的の両者を果たす手段を考え出すことを求めているのである。これを横展開、水平展開という。
 なお、これは、ISO9000−2:1997の4.14.1で、
 「同じ原因及び状態が予防処置に関係することがある。この場合は一定の型又は傾向が現れて、未発生の不適合発生の可能性を示唆するので、調査すべきである。」
 これは、横展開、水平展開のことである。すでに4年前に指針で説明している。改善経験のない審査員は、これを読みこなせず、気がつかないのであろう。あるいは、不勉強で読んでいないのであろう。