内部監査と品質マネジメントシステムのプロセスの監視との違いは? (H14年2月1週号)
1.何をプロセス監視するのか?
 ISO9001:2000の「8.2.3 プロセスの監視及び測定」で「品質マネジメントシステムのプロセスの監視」を要求している。しかし、品質マネジメントシステムについての監視は「8.2.2 内部監査」で要求している。
では、「8.2.2」の「品質マネジメントシステムの監査」と、「8.2.3」の「品質マネジメントシステムのプロセスの監視」とは異なるのか?
品質マネジメントシステムには、計画し、フォローし、評価するというプロセスがある。しかし、それは生産する「製品実現のプロセス」と明らかに異なる。
ISO9004:2000の同じ項目を見ると「能力、反応時間、サイクルタイム又は処理量」など、品質マネジメントシステムとは直接関係のないものばかりが登場する。これらはズバリ「製品実現のプロセス」の監視、測定の用語である。
逆に、ISO9001:2000の「8.2.3」には、重要な「製品実現のプロセスの監視」という要求が明記されていない。プロセスアプローチをうたい文句にしているだけに問題である。
ここに2000年版のウィークポイントがある。審査員はこの疑問に明確に答えることができるであろうか。企業側はきちんと対応できるのであろうか。
 
2.品質マネジメントシステムのプロセスと製品実現プロセスの相違の不明確
 この「品質マネジメントシステムのプロセス」と「製品実現のプロセス」との区別のあいまいさは、「4.1 一般要求事項」の参考に「品質マネジメントシステムに必要となるプロセス」とあり、このプロセスに製品実現のプロセスが含まれているという説明がある。
これが混乱の原因になっている。「品質マネジメントシステムは、製品実現プロセス(コアプロセス)を運営管理するシステムであり、そのシステムは計画、統制、評価、改善のプロセスを持つ。」と言えばよいのである。
 
3.品質マネジメントシステム要求事項と製品要求事項の違い
 これは、すでにISO9000-1:1994の「4.3 品質システム要求事項と製品要求事項の相違」で明確に説明がある。「国際規格のISO9000ファミリーは、品質マネジメントシステム要求事項と製品要求事項の区別を明確にしている。この明確な区別により、ISO9000は、すべての業種、品質特性に普遍的に適用できる。品質マネジメントシステム要求事項は、製品の技術的な要求を補完するものである。製品の技術的な仕様(例えば、製品標準)とそのプロセスの仕様は、ISO9000ファミリーや指針とは、別のものであり、区別される。」
 ISO9001:2000にも「序文0.1」で「この規格が規定する品質マネジメントシステムの要求事項は、製品に対する要求事項を補完するものである。」とある。94年版では、「技術的な(すなわち、製品に関する)規定要求事項にとって代わるものでなくこれを補うものである。」とやや具体的であった。この製品要求事項を実現するプロセスが「製品実現プロセス」である。品質マネジメントシステム要求事項を実現するプロセスが「品質マネジメントシステムプロセス」であり、これがISO9001:2000で要求する業種に普遍なプロセスである。
 
4.PDCAの適用に注意!
 94年版で明確であったこの区別が、2000年版で何故、このような混乱を生じたのか。その原因はPDCAの誤解にある。ISO9001:2000はPDCAサイクルを中心に据えた。しかし、PDCAは使うときに気をつけなければならない。それは「マネジメントサイクルではない」という点である。それはデミングが言ったように「継続的な改善サイクルである」ということである。
何故ならPDCAのうち、Dは「製品実現のプロセスの活動」であって、マネジメント活動ではない。マネジメントプロセスは、PCAである。Dが抜ける。だから、マネジメントの基本プロセスは、計画、統制、評価なのである。
ISO9001:2000では、例えば、「7.3 設計・開発」となっている。しかし、これは94年版の「4.4 設計管理」のことである。「管理」がなくなった。これがPDCAを間違って適用した影響である。「設計・開発」は、製品要求事項の世界である。
ISO9001:2000では規定していない。規定しているのは、品質マネジメントシステムである。「設計・開発」の「品質マネジメントのやり方」である。「設計・開発管理」の要求である。PDCAに惑わされなかった94年版のタイトルのほうが正確である。