M審査機関の審査・初体験(H14年4月1週号)

従業員10人くらいのA社は、無駄の多いISO9001:2000を避けるため、 審査機関にM機関を選択した。 同審査機関は、最近、設立された後発の審査機関で、中小企業に向けに重点をしぼり、 大企業型の押付け審査をしないという宣伝をしていたので、 A社はそれを信じて選択したようだ。 私もM審査機関ははじめてであるので、その中小企業向けと称する審査対応に興味を持った。 ところが下記のようにそれは怪しくなってきた。

M審査機関は最初に書類を提出する。 その審査結果がリポートで来た。 品質マニュアルの改訂履歴に初版を記入した行がないなどの指摘がまずあった。 どこのshall不適合かであり、 無駄がよく分かっている会社は図面などにも初版は一々改訂欄に書かない。 そして、マニュアルの6.2.4の作業環境には、 労働安全衛生法なみの記述がなく、 安全服装、安全防具、安全パトロールなどの記述がないと指摘があった。 2000年版はこの部分は文書化要求はなく、A社は簡単な記述である。 特にA社は管理会社で、現業を持っていない。 この書類審査のリポートでこの審査員が大企業型の押付け審査員で shall無視のタイプであることは十分予想できた。

そこで、A社は、予備審査には徹底的にshallで進めることになった。 知人がコンサルタントとして傍聴したが、次のような報告が来た。

・「事前の予測どおりひどい審査員でした。 コンサルが聴いているから、下手なことはいえない、アドバイスは出来ないことになっていると言いつつ、ひたすら主観的レコメンドの嵐でした。審査の質問にA社担当が答えようとすると、声を出すいとまもなく、私見や次の質問を矢継ぎ早に出す始末で、ほとんどインタビューになっていませんでした。
・基本的な審査手順の原則を全く無視したものでした。A社側は、終始毅然とshallの根拠を問いただす姿勢を貫き踏ん張っていましたが、どこのshallですかと聞いても、『shallはともかく、規格要求を満たしていない』という始末でした。自分の思い通りの答えが返ってこないもので、『審査をしているのは、われわれだ。認証がほしくないなら、自己宣言すればよかろう。気に入らなければ、言い分の通る審査機関に変えればいいだろう。』と激高する場面もありました。」

どちらが顧客か分からない。 顧客重視のISO9001:2000が泣く審査である。 ナンセンスなのは、A社では教育・訓練の終了の都度、報告書に記録をとっているが、 それは訓練単位の報告である。 3名同時に訓練すると、3名のフルネームが書かれる。 審査員はそれを「個人別の記録がない」と指摘した。 10名くらいのA社に、さらに個人別にソートした記録用紙は必要ない。無駄である。 ソートせよとのshall要求はない。

また、この審査員は 「検査記録は、合格印だけではだめであり、測定値の記録データが不可欠である」 とshallにない要求をした。 A社は、顧客が測定値の検査記録を要求しているときは提出しているが、 要求ないときは提出していない。 ISO9001:2000にそれを全部適用したら、 提出要求のない場合も、測定値記入となり、手間が増加する。 書類や記録を増加させることが、管理の向上であるという審査員の基本発想が問題なのである。 すでに、この検査記録の件は外資大手のL機関、S機関、B機関、T機関も問題なくパスしている。 不適合としたのは、M機関が初めてで、 これで中小企業向け審査機関であるかは怪しくなってきた。

A社は本審査前にM機関にクレームを出す予定であるが、 そのクレームに対して外資大手のL機関、S機関、B機関、T機関がやってきたように、 審査員を交代させるか、指摘を撤回するかの処置をM機関が取るかによって、 この機関が宣伝通りの中小企業向けの審査機関なのか、 それは 最近、食品表示の偽表示が流行っているように 「カンバンに偽りあり」の審査機関であるのか、分かることになろう。