あるサーベイランスシーン・その1(H14年6月2週号)

精美堂は30人くらいの小企業である。SGSの認証登録名簿に載っている。興味あることに管理責任者が、同社の公開のホームページにISO9001の審査状況を細かく報告していることである。

すでに、サーベイランスを2回経験しているが、特に、3月のサーベイランスでは、悪名高いT審査員(オフレコで名前は聞いた)が来て、その審査の会話記録がある。1回目のサーベイランスの審査員が標準的な人だったので、目立ったのであろう。この記事はインターネットで「精美堂」と入力すると簡単に索引できる。許可を得て、抜粋して3回ほどに分けてコメントする。

・審査員:あなた〇〇店長だと、誰が証明するのですか?
・会社側:(一同沈黙。突然何を言っているのかわからない。)私が店長だと全員が知っておりますよ。

・審査員:それを、誰が証明するのですか?
・会社側:言っている意味がわかりません。図面などの場合Rv2とか日付け、サインなどでわかりますよ。

・審査員:わかりやすく言うと。................................何々。
・会社側:審査員の言っている意味はわかりません。

・審査員:それならそれでいいですよ。(かなり感情的で投げやりな言い方)
・会社側:そんな言い方ないでしょう。(私も一寸感情的になる。反省する。)

この審査員は、早口でISO9001規格の文章や番号を言うので、会社側は聞き取りにくいので他社の情報で有名である。上記の会話もペラペラとやられたようである。 さて、上記会話は、読者は「一体、ISO9001のどの条項の審査なのか。」よく分からないであろう。

実は、精美堂はまだ、94年版だから、「4.5文書及びデータの管理」の項目の議論なのである。その「文書の最新版の状態を明確にする台帳又はそれと同等の文書の管理手順を定め....」とある項目である。T審査員は、全文書の一覧リストを作り、その改訂状況を一覧表にしておくべきだというのである。規格の「台帳」を「全文書の改訂履歴が分かる一覧性台帳」と解釈し、頭の中に、1つしかない固有のシステムが存在するのである。

精美堂は、各文書に台帳式履歴欄があるとマニュアルにうたっている。しかし、1つのシステムしか頭にないT審査員は理解できない。上記の会話に「あなたが〇〇店長だと、誰が証明するのですか。」はT審査員が自己の一覧式台帳システムを押し切るために持ち出した理屈であるが、ますます会社側は理解できない。会話にならない。それは論理性ある理屈になっていないからである。私はこういう審査を「禅問答審査」と称している。

店長の識別と、文書の最新版の状態を知るための台帳の必要性とは全然関係がない。 そこで、会社側は、大手の会社から来ている図面を持って来て、個々の図面の中に改訂履歴欄があることを示し、これと同じで精美堂も最新版が分かると言っているのである。しかし、T審査員はまだ、粘る。もう、結論は明らかである。T審査員は最後に引き下がるが、素直に引き下がらない。感情的になっている。来月、同じT審査員が3回目のサーベイランスに来るというので、管理責任者は、審査機関にT審査員を拒否しようと思ったが、また、興味あるネタが出そうなので、拒否はやめたそうである。

ISO9001:1994の序文では「画一的な品質システムを強要することがこれらの規格の目的ではない。」と言っている。また、ISO9000-1:1994では「ISO9000ファミリーは、満足すべき品質システム目標の用語で書かれている。これらの国際規格は、その目標をどのような方法で達成するかは述べていない。それは、各企業の選択にまかせられている。」とある。さらに2000年版でも、序文に「組織における品質マネジメントシステムの設計及び実現は、組織の変化するニーズ、固有の目標、提供する製品、用いられるプロセス、組織の規模及び構造によって影響を受ける。品質マネジメントシステムの均一化又は文書の画一化が、この規格の意図ではない。」

「文書の最新版の状態を明確にする台帳」とあるのをT審査員は「全文書の改訂の一覧性台帳」しか認めないというのは文書の画一化の代表事例である。