あるサーベイランスシーン・その3(H14年6月4週号)

-------T審査員の規格解釈に関するコメント

  1. 設計管理の解釈間違い

    精美堂の管理責任者はホームページで次のように言っている。
    「『設計管理』の意味は外で設計して御社で管理するものですよ。「設計管理」と記載のある組織表から削除した方がいいですよ。との審査員のお言葉。」
    これは、噴飯ものというより、悲惨である。94年版の「4.4設計管理」は社内の 設計の管理である。2000年版では「7.3 設計・開発」となり、管理が消えたが、94年版同様、中身は設計の管理手順の要求である。この審査員は2000年版の理解も 危ない。


  2. 製品審査とマネジメント審査の混同

    精美堂の管理責任者はホームページで次のように言っている。
    「デジタルのPDFアクロバットリーダーのバージョンは今いくつか。との質問はまったくISOと関係ない質問であります。」
    T審査員の質問は、「製品要求事項」に関する質問である。しかし、ISO9001の審査はマネジメントシステムの審査である。だから、製品にISOのマークはつけられない。T審査員は、この違いがよく理解できず、節度のない審査をしている。本質的にマネジメントというものがピント来ないのであろう。


  3. 設計の間違った解釈

    精美堂の管理責任者はホームページで次のように言っている。
    「設計の問題で御社の設計は設計ではないですね。と再三いわれました。既知の事実をいくら積み上げても設計にはならない。」
    T審査員は設計について、独特の(というより、間違った)解釈をするので有名。

    (1)造園業
    私の友人のコンサルタントが造園業者の指導をしたとき、T審査員が来て、造園設計は対象となるが、施工設計は既知の工事の組み合わせになるから、対象にならないと言ったと言う。どうやら工程設計のことを言っているらしい。
    それを言うなら「工程設計はISO9001:2000では、設計管理の対象にならない。」と言うべきで、既知の工事の組み合わせ」が間違いなのである。

    (2)足場設計
    私はそのとき、たまたま建設足場設計の会社の指導をしていたが、ここはゼネコンなどから建設図面をもらい足場を設計し、それにより数種類の標準パイプ数を算出していた。典型的な積み木細工の設計である。
    既知の事実(標準パイプ)を積み上げているだけである。私は友人にT審査員の意見によるとこの足場設計は設計でなくなると言った。もちろんこの会社は、足場設計を製品設計としてISO9001を取得している。

    (3)自販機のフェースデザイン
    数年前、私が自動販売機の缶交換サービスの会社を指導したとき、T審査員が主任審査員で来た。通常こういう業者には設計行為はないと解釈する。しかし私は、自動販売機表面の缶の配置を設計とした。
    事実、業界ではフェースデザインと称していた。こうして94年版のISO9001を取得した。T審査員は全く異論を言わなかった。フェースデザインも缶の並べ方を変えるだけで、缶の種類も決まっており、既知の「積み上げ」に過ぎない。しかし、これはT審査員はOKにしている。

    (4)ISO9000:2000の定義
    ISO9000:2000の「3.4.4」に設計の定義では「要求事項を製品、プロセス又はシステムの、規定された特性又は仕様書に変換する一連のプロセス」とある。すなわち、設計は、製品設計、プロセス設計、システム設計と3つになる。ところが、ISO9001:2000の「7.1 製品実現の計画」の「参考2」に「組織は、製品実現のプロセスの構築に当たって7.3に規定する要求事項を適用してもよい。」とある。すなわち、製品実現のプロセスは工程であるから、工程設計に「7.3」を適用してもよく、それは企業の選択であるとしている。

    裏を返すと、「7.3」がshallとして適用されるのは、製品設計とシステム設計に限定され、プロセス設計は、任意要求である。しかし設計一般論で言えば、ISO9000:2000ではプロセス設計も設計であるから、造園の工事設計も設計になる。しかしISO9001:2000の「7.3 設計・開発」の強制適用を受けないというだけである。T審査員のISO9001:2000の理解はますます、危ない。


  4. トレーサビリティの間違い

    ある組立製品を作っている小企業にT審査員が行って、ビスについても全部、何時買ったビスをどの製品に使ったかをトレースできる台帳をつけるべきだと指摘した。これも「規定要求事項にないし、材料までトレースする要求はない。」と反論して、その会社では拒否して問題なかった。精美堂がもし、組立業であったなら、同じことを言われただろう。

    精美堂は、すでに4名の審査員の審査を受けているが、特に、1回目のサーベイランスの審査員は模範的な良い審査員であったという。どんな審査機関でも審査員のばらつきは避けられないが、これをきちんと批判する会社、その批判を受入れる審査機関の選択が、効果的なISO9001:2000システムを構築するには必要であろう。