あるサーベイランスシーン・その4(H14年7月1週号)

(精美堂のホームページに関するコメントシリーズは、今週号でとりあえず終了する。次回のサーベイランスにまた、T審査員がくるそうなので、精美堂の報告を期待したい。)

T審査員の禅問答審査はどうして発生するか?

  1. A社の工場の入口は?
    精美堂のサーベイランスの会話記録に、文書改訂管理の問答中、突然「あなたを品川店長だと誰が証明するのですか?」という質問が出て、精美堂側が呆然とするシーンがある。私はこれを禅問答審査と言っている。実はT審査員は禅問答審査でも有名である。

    2年ほど前T審査員は、ある20人くらいの製造業の会社Aに予備審査に行った。会話が進むうちT審査員はいきなり製造課長に、「工場の入り口はどこですか?」と質問を変えたので製造課長はちょっととまどい、「あのシャッターが閉まっているところです。」と答えた。ところがその返事にT審査員は不満である。いろいろなすれ違いの質疑の後、結局審査員の聞いている意味は、「『4.9工程管理』の最初の管理手順は何ですか?」ということだと分かった。審査員が帰った後会社側は「日本語になっていない。」と大笑いになったという。

  2. 精美堂の場合の望ましい審査の質問順序
    精美堂のこの例の場合質問の順序は、次のようにどの規格の質問であるかから入るべきである。

    審査員: 「『4.5文書管理』の改訂版の管理要求(4.5.2)に対してはマニュアルのどこに管理手順を書いてありますか。」
    会社側: マニュアルに改訂版はAから始め、各文書の原本の改訂履歴欄に台帳式に示すと書いてある部分を示す。
    審査員: 「では、あるサンプルでそれを示してください。」
    会社側: ある文書のサンプルを見せ、マニュアル通りになっていることを示す。
    審査員: 「『全文書の改訂履歴一覧式台帳』は作成していないのですか。」
    会社側: 「それは『4.5文書管理』のどこかに要求がありますか。各文書中の履歴台帳で要求を満たしていると思います。」
    審査員: 「要求はありません。ただ聞いただけです。」

    本来は、これで終わりである。この標準的な会話では、文書管理に「あなたを品川店長だと誰が証明するのですか?」という禅問答は絶対に出ることはない。会社Aの場合も、「規格の『4.9工程管理』の最初の要求である『工程の明確化と計画』について質問します。」という入り方をしていないから、禅問答になった。

  3. 望ましい審査の会話ができない原因
    ISO9000-1:1994の「ISO9000ファミリーは、満足すべき品質システム目標の用語で書かれている。これらの国際規格は、その目標をどのような方法で達成するかは述べていない。それは各企業の選択にまかせられている。」とあるが、T審査員はこれが理解できないタイプである。この場合、「文書の最新版(現在の改訂版)の状態を明確にする台帳又はそれと同等の文書の管理手順を定め........」の文が「目標」を示し、達成方法は下表のように各社いろいろある。

    符号
    代替方法
    有効性
    コスト
    総合評価
    A
    台帳管理方式 全文書一覧台帳方式 改訂版管理は有効性があるが、一覧性は目的不明で有効性が低い。
    各文書からの転記など無駄が多い。
    B
    各文書内個別台帳方式 有効性あり。
    無駄が少ない。
    C
    それと同等の管理方式 摘要、備考欄注記方式 有効性あり。
    変更が多い文書に不向き。
    D
    旧版廃棄・別文書作成方式 有効性あり。
    廃棄に手間がかかる。
    E
    上書き方式(IT方式) 有効性あり。
    IT文書に限定される。
    F
    今後考えられる改善案 有効性があること。
    より少
    より高い評価。


    T審査員は、A方式は、1つの代替案であることが理解できない。さらに悪いことに、上記のようにA方式は総合評価が最低の方法である。精美堂は、無駄の少ないB案を選んでいる。将来、もっと総合評価が高いF案があるという代替案発想が根底に必要であるが、T審査員にはそういう発想がない。柔軟な良い審査ができない。

    2000年版の序文にある「組織における品質マネジメントシステムの設計及び実現は、組織の変化するニーズ、固有の目標、提供する製品、用いられるプロセス、組織の規模及び構造によって影響を受ける。品質マネジメントシステムの均一化又は文書の画一化が、この規格の意図ではない。」の文書の画一化、すなわち、A方式の画一化をT審査員は意図している。だから、禅問答になりやすいし規格の解釈違いも多いし、見当はずれな枝葉にこだわるテニオハ審査となる。他の審査員との意見の違いにもなる。