力量や認識度の現場審査?(H14年8月1週号)

  1. 力量の審査
       2000年版で力量が登場したので、現場に行き、作業者に質問をして力量をチェックするとはりきっている審査員がいるという。しかし、これは大人の常識では考えられないことである。当然、規格にはそんな要求はない。規格をよく読んでいないためである。ISO9001:2000の6.2.1では「関連する教育、訓練、技能及び経験を判断の根拠として力量があること」とある。「判断の根拠」の意味をよく理解することである。

       この誤解の1つは英語にあるようだ。ISO9000: 2000の用語定義に「3.9.12力量:知識と技能を適用するための実証された能力」とある。この「実証された」が英語でdemonstratedである。日本人はデモというと実演や行動とすぐに解釈するが、英語のdemonstrateは「証拠を示す」の意味が先で、次に「行動で示す」の意味がくる。「実証」の「実」と、デモという和製英語がミックスして誤解を生んだのであろう。しかし、ビジネスの常識がその誤解を防止できる。

       巡査が、ドライバーに「ちょっと車庫入れをしなさい。S字カーブを運転しなさい。」とは、常識的に言わない。「運転免許を見せてください。」である。巡査は、教習所の試験官でない。運転免許は「教育、訓練、技能及び経験の根拠」を示している。教習所で専門の検査官が最終的にチェックして取得したものである。営業運転の場合はより高いレベルが免許取得に要求される。そういう国のマネジメントシステムがあるから、それに基づいてチェックすればよいのである。

       ISO9001:2000の審査はマネジメントシステムの審査であって、個別企業の業務審査ではない。個別業務は、会社側が一番よく知っている。審査員は素人であってそれを評価する「力量」がない。簡単な質問と観察で企業の実務者の力量判定などできるはずがない。審査員本人が「力量のない」審査をしようとするコッケイな行為である。教育・訓練の記録は要求されているから、審査員はその記録を確認すればいいのである。マネジメントシステムの審査なのであるから無免許運転を問題とすればよいのである。

  2. 認識度合いの審査
       ISO9001: 2000の6.2.2のd)に「自らの活動の持つ意味と重要性を認識すること」と「品質目標の達成に向けてどのように貢献できるかを認識すること」という2つの要求がある。 ある審査員がサンプリングで、ある作業者にその認識度合いを聴聞した。しかし、たまたま、サンプリングされたその作業者は口下手な性格でうまく質問に答えられなかった。 ISO9001:2000では「認識のことを聞かれたら、即、口頭で表現できること」などという要求はない。効果測定の要求もない。また、聞かれてべらべら答えたからといって、認識度合いが高いと言えない。寡黙な人ほど、信用ができ、ぺらぺらしゃべるのは詐欺師に多いというのが大人の基礎的な常識である。こういう審査で口頭試問という審査方法を選択するのは知恵がない。
       子供がルールを守らないと母親が「『ごめんなさい。』と言いなさい。」と子供に押し付ける。子供はよく分からず、ただ、「ごめんなさい。」と反復して言うだけである。子供が本当に理解して言っているのかは、口先だけでは分からない。だから、常識ある大人の考える審査方法ではない。
       作業者に聴聞して、認識度を確認するのは、作業者に対して「認識の内容」よりも「いかに質問にうまく答えられるか」という方向に関心を向けさせるだけである。 それは、モラル低下を起こす。だから、雪印のようにラベルはきちんと貼る。偽ラベルもきちんとルール通り貼る。しかし、偽ラベルかどうかは、審査員はいくら肉を眺めても、相当の専門家でないと分からない。