「中小企業のためのISO9000:何をなすべきか:ISO/TC176からの助言」2000年版・発行。(H14年8月2週号)

「中小企業のためのISO9000:何をなすべきか:ISO/TC176からの助言」の94年版は具体的な例(サービス業の例も多い)が多く、柔軟性のある名解説書であった。審査員が画一的なシステム要求をするとき、この助言によって別の方法もあるという反論ができた。例えば、マネジメントレビューの回数が年1回なのに対し、1回では少ないという審査員の個人的な指摘があったとき、この最高の権威がある助言に年1回が適切であるとして対応することができた。要するに権威ある代替案を提示できるのがこの本の価値である。 その2000年版が英文で発行された。日本訳の予定は未定とのこと。

  1. 「4.1 一般」
    あるプロジェクトの一部である設計をある業者にアウトソースする例があげられている。他のアウトソーシングの例としては、熱処理、洗浄、亜鉛メッキ、塗装、IT、保全がある。
    アウトソースは購買の要求と関係するので7.4の購買でくわしくふれている。これは納得できる。また "アウトソース"という言葉と"下請負"という言葉は一般的に同じ意味としている。

  2. 「4.2.2 品質マニュアル」
    a)からc)までの項目以外に、業種、品質マネジメントシステムの特徴、品質方針と品質目標、責任権限の表明、組織図のような組織の表現、文書の内容と使用・保管場所、会社独自用語の定義などを含めるように助言がある。 品質マネジメントシステムのプロセスの相互関係については、フローチャート、図、画像、相互関連マトリックスなどの方法をとることができるとしている。 品質マニュアルは必要があれば、外部に示すものだから、機密事項を含めるのは避けるべきとしている。
    以上は当然であろう。

  3. 「4.2.3 文書管理」
    最新版がワープロによる日付で分かれば、"改訂3.1"のように別に新たな改訂識別項目を作らなくてもよく、日付が改訂の識別となるとしている。文書改訂番号制は一般性がなく1つの代替案であることを示唆している。
    ISO9001:2000規格は情報の更新を要求しているが、具体的な方法を定めていないから、この規格で許容されている柔軟性の長所を生かし、最もシンプルで、最も実用的な文書管理の方法を適用できること、これにより不必要な官僚制とコストを避けることができるとしている。私の文書番号ゼロ、配付台帳ゼロの発想はここから出る。特に、人件費が中国の20倍の日本で、品質に関係ない無駄な書類に手間をかける余裕はないはずである。

  4. 「5.1 経営責任者のコミットメント」
    "証拠を提供する"例として管理者の会議議事録をあげている。

  5. 「5.5.2 管理責任者」
    94年版に比較すると次のような解説が増えている。
    @
    小企業ではオーナーの兼任も適切なこともあること
    A
    社外の人の任命はすべきでないこと
    B
    職場が分散しているときは、それぞれにローカルの管理責任者を置くことはあるが、全体のまとめの管理責任者は会社として1人でなければならないこと

    いきとどいた解説である。あるISO専門誌で「管理責任者は外部の人が望ましい。」とあったが、これは間違った解説であることはこれで明らか。また、JISの複数説も弱い。

  6. 「6.1 一般」
    力量は明示できる教育・訓練・技能・経験の4つの組合せであり、一人の人が4つとも必要だという要求はなく、仕事によって組合せは異なるとしている。当然である。

  7. 「7.5.2 特殊工程」
    次の3つが発生し、まだ、混乱状態である。
    (1)
    ISO9001:2000の本文:「『事後の検証』が不可能な工程」
    (2)
    この本:「検査が事後『すぐ』にできない場合と『破壊検査』になる場合」 しかし、両者とも検証可能なので、ISO9001:2000の本文の要求と異なる。
    (3)
    ISO9000:2000「3.4.1 プロセス」の用語定義・参考3:「事後の検証が『容易に』又は『経済的』にできない場合」

    事後とか、すぐにできない場合とか、容易にとか(容易の度合い)、経済的でないとか(経済的の度合い)、あいまいである。しかし、審査はISO9001:2000で行うべきだから、上記の(1)が優先する。
    量産の場合、ある種の検査項目は抜取りである。これは工程が安定していれば全数検査は経済的でないからだ。そうなると(3)の考えでは抜取り検査をしている工場はすべて特殊工程になってしまう。
    特殊工程はISO9001:2000の本文では消え、用語定義の参考にまで引き下がったが、この問題は依然として未解決である。
    ちなみに、QS9000の2000年版(ISO/TS16949:2版)では「7.5.2」はすべての工程に適用するとある。そうであろう。

  8. 「7.6 監視機器と測定機器の管理」
    「監視」は、調査チェックリストなどの監視の道具による観察や監督活動を意味し、「測定」は巻尺を使って量的な数値を決定するようなことと明確に区別している。「測定機器」はISO9000:2000用語定義にあるが、「監視機器」は用語定義にないという矛盾があるだけに、役立つ説明である。

  9. 「8.5.2、8.5.3 是正処置、予防処置」
    とった処置が効果的であるかをフォローするという説明は、94年版の解説にもあるが今回はこれがさらに強調されている。JIS独自の参考の説明と全く違う。これは改善には重要な最終のつめのステップであるだけに大きな違いである。