あるISO9001:2000通信教育テキストの基本的な間違い
(H14年9月1週号)

94年版から2000年版移行のため、あるISO9001:2000の通信教育を受けている人から次のようにそのテキストの内容について質問があった。質問の括弧内がそのテキストの解説内容である。

「質問1」
「4.2.3 文書管理」の解説で、「外部文書の管理が新たに追加された。」とありますが、当社は94年版のときから台帳で管理しています。これを変更する必要があるでしょうか。
「コメント1」
94年版では「4.5.1 文書及びデータの管理・一般」で「これらには、規格及び顧客の図面のような外部の文書を該当する範囲で含むこと。」とshallで要求されているので、通常、94年版でも外部文書(documents of external origin: 英語は94年版も2000年版も同じ)は管理しているはずである。
「質問2」
「5.5.2 管理責任者」の解説で、「94年版では『他の責任と関係なく、次の権限をもたせる』とあったのが、2000年版で『他の責任と関係なく、次の責任と権限をもたせる』と『責任』が追加になっている。94年版は権限だけで、責任がなかったから、2000年では、厳しい要求となった。」とあります。何がどう変わったのか理解できません。
「コメント2」
権限と責任は、コインの裏表の関係にあることは、ビジネスマンの常識である。ISO9001:2000で、この「責任」を追加したのは、表現をきちんとしただけで、実態には変更がない。権限のみあって責任がない管理責任者は、最初から存在しない。
「質問3」
「7.4.3の設計・開発のアウトプット」の解説で「インプットで使用した様式をアウトプットで使用するようにすれば、対比が容易である。」とあります。新規にアウトプット様式が必要でしょうか。
「コメント3」
英語のagainstには変更がないが、日本語訳で94年版の「対して」から2000年版は「対比して」に訳を変えただけである。それなのにこの誤解である(このホームページの左にある2000年版項目別分類コーナーの「7.3設計・開発」の14年3月1週号と3月3週号に詳細説明あり)。何も変わりない。この解釈ミスは多いようである。原因は、設計の常識的な知識がないからである。
「質問4」
「7.4.2 購買情報」の解説で「『購買情報を伝達前に妥当であるかを確実にする。』となり、94年版の『発行に先立ち、確認し、承認する』がなくなった。」とあります。帳票変更となるのでしょうか。
「コメント4」
『確実にする』とはあるシステムや手順をもつことである。したがって、具体的な手順として、94年版通りの事前審査と承認という方法をとればいいのであって、変更の必要性はない。規格も表現が変わっただけで、システムの変更要求ではない。
「質問5」
「7.4.3 供給先での検証」の説明で「顧客のみになった。」とあります。システム変更でしょうか。
「コメント5」
ISO9001:2000では「組織又はその顧客が、供給先で検証を実施することにした場合」とあり、94年版と同じである。最初の「組織」を見落としている。
「質問6」
「7.5.5 製品の保存」の説明で「製品保存はサービス業では適用除外となる。」とあります。理解できません。
「コメント6」
自動販売機の補充サービス業は缶の保存、運送業は運送する貨物の保存、スーパーは食品などの保存、医療サービスでは薬品、医療機器の保存があり、それぞれ重要である。サービス活動とサービス業との混同である。
「質問7」
「7.6 監視機器及び測定機器」の説明で「94年版との大きな違いは、『製品の適合性を実証するため』となり、工程中に組み込まれている測定器やモニターは含まれない。」とあります。要求は簡単になったのでしょうか。
「コメント7」
94年版と変わらない。94年版も「製品が規定要求事項に適合していることを実証するために使用する測定機器」と限定している。94年版のときも、プロセス制御用の計測器は「製品が規定要求事項に適合していることを実証するために使用」していないので、適用されていない。変更はない。
「総合コメント」
これらの間違いは、文字面にこだわって、実務の本質を見失ったという点が共通している。かえって、文字の読み違いも気がつかないという結果にもなる。常に疑問をもち、現実の場を具体的に想定しながら規格を読まないと、誰でもこの間違いに陥りやすい。審査員だとビジネス常識欠如のテニオハ審査となる。