T氏の近況報告(H14年10月2週号)

T氏は、関西のISO9000コンサルタントとして有名。中小企業も多く手がけており、数年前から、私の一冊マニュルに賛同して、コンサルティングに使っている人である。もう、何十という会社指導をしていると思う。

お互いに多忙のため、会ったことがなく、氏から電話があるくらい。しかし、氏の電話は生々しい実状を語っているだけに、貴重である。

先週、久しぶりに、T氏から近況の電話が来た。概況、次のようなことを、体験を通じて言われた。

1.日本系と外資系の審査機関では、完全に審査姿勢が異なる。日本系は、近代化が遅れた旧態依然としたお上指導型である。偉そうな姿勢である。日本のために嘆かわしい。

2.ある日本系の審査機関などは、品質マネジメントシステムの関連を示すのに、画一的なチャートを要求する。ある企業側がその審査機関を選んだので、やむを得ず、図表3枚くらい、その画一的なチャートに修正した。非常に分かり難いチャートで意味がなかった。ここの審査機関はどの審査員もこの画一的なチャートを要求する。審査員に個性がない。

3.審査では、審査員は、30くらいの指摘をすることがある。しかし、shallで反論すると、ほとんど、不適合がなくなるが、その議論に疲れる。暗い議論である。企業規模が大きいと、審査が数日続くが、不毛の暗い議論の連続で嫌になる。建設的な明るい議論が出来ないのだろうかと思う。品質向上はもっと明るいものではないのか。

4.コンサルタントとして、審査に同席することもあるが、反論すると、どなられ、退席を要求されたこともあった。コンサルタントでなく、社長の指示で臨時の従業員待遇で出席しても、だめなこともあった。中小企業など、口のうまい審査員にペラペラ偉そうなことを言われると、つい、言いなりになり、過剰な書類を押し付けられるから、フェアな審査のためには、専門家の参加も必要である。

以上が、電話の概要だが、しかし、T氏は、最後に、簡素化したシステムでの認証は増加しており、自信を持っていると言った。私は、「がんばって下さい。」と言って電話を置いた。

80年代にかけて、世界を席巻した日本の品質は、今、その面影はないようだ。戦後、品質管理を現場に導入した先人達は、標準偏差を「ばらつき」とやさしく言い換えた。分析手法を「三種の神器」とか「7つ道具」とか表現した。学者風を嫌い、とっつきやすくし、現場と同じ視線で導入した。これが成功した。
しかし、ISO9000は、難解な直訳の日本語と、分かり難いチャートの強制に加えて、偉そうな審査員のお上指導型の暗い審査によって、現場と同じ視線でなく、高い立場から品質管理を押し付けようとする。戦後の明るい民主的な品質管理の伝統を壊しつつあるようだ。いかに、日本の経済が本質的に深刻な内面をもっているかを示している。

しかし、審査員と堂々とわたり合い、簡素化したシステムで自信をもってISO9001を取得し、頑張っている20名くらいの小企業もある一方、何千人という大企業が、審査員にへつらい、書類過剰なシステムを奴隷的に押し付けられ、サーベイランスのたびに忙しく、暗い気分になっている例もある。

ISO9000にも構造改革が必要である。