NT社の予備審査(H14年11月1週号)

1.ビジネスパートナーの間違い
   300人ぐらいの中堅企業であるNT社は、L機関の予備審査を受けた。あらかじめ「テニオハ審査」を避けるように文書で提出していた。そのため、審査員は、やや低姿勢であり、ビジネスパートナーとして考えてほしいと言い出したという。これは余計なことである。審査は第三者的な客観性が期待されており、企業サイドでなく、むしろ顧客サイドに立って行うのが公平な審査の基本姿勢である。本審査でビジネスパートナーと称して余計なアドバイスをする大義名分となっている。

2.検査データの要求
   NT社では、検査記録は品番とロット数に対して「合格」と検査員の氏名、検査日の記録だけである。審査員は、不適合ではないが測定値まで記入して記録したほうがよいと主張した。審査員はその自説を補強するために、ISO9001:2000の1.1 適用範囲の一般a)にある「顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫した提供する能力をもつことを実証する必要がある場合」を引用し、「なんのためにISO9001:2000をとるのか」よく考え、検査数値を書くべきだと言い出した。

   NT社の管理責任者は大手企業の出身なので、「簡素なシステムのほうが知恵に満ちた高度なシステムである」と説明すべきところを、ただ「無駄なデータは不要」だけの説明で「安かろう、悪かろう」の誤解を与えたようで迫力がなかった。このため、序文にある「品質マネジメントシステムの構造の均一化又は文書の画一化が、この規格の意図ではない。」という文章を即座に引用できなかった。いずれにせよ、審査員の助言を徹底的に拒否したので、腹が決まり、ますます本審査前に理解が逆に深まり、理論武装が進んだ。

3.「とった処置の結果の記録」のナンセンスな解釈
   NT社は、是正処置の帳票には、是正処置の「完了確認欄」があり、是正処置が終わると、管理者がこれに確認の捺印をしていた。審査員は、これを見ながら「8.5.2 是正処置」のe)「とった処置の結果の記録」がないと言い出した。管理責任者は、「とった処置」の次に「結果」という単語がまた、登場するので、「結果」は別の次のステップと誤解し、これを「とった処置の『効果』の記録」と審査員同様に解釈した。あわてて、後で、私に問い合わせがあった。

   私は、これは直訳調のための誤解で、「とった処置」だけですでに日本語では「結果」の意味があり、「とった処置の記録」が通常の日本語の言い方であると説明した。これは、次のステップであるf)「是正処置において実施した活動のレビュー」に是正処置の効果評価がテーマになっていることからも明らかである。
   通常の日本語では「東京に行ったことの結果の記録」とわざわざ、「結果」をつけず、「東京に行った記録」というのが本来の言い方である。したがって、NT社の「完了確認欄」が、この「とった処置の結果の記録」に対応するので何ら問題ないと説明した。

4.無意味なディスカッション
   審査員は、帰りに予備審査のまとめを簡単に残していった。そこには、「ISO9001:2000の要求項目について、ディスカッションした。」と書いてあった。ナンセンスである。審査はディスカッションすることではない。ディスカッションとは審査員が自制しなくてはならないコンサルの行動のことである。それを平気で書いている。

   この審査員はコンサルと審査のけじめのないタイプであることは、これで明らかなので、本審査は余計なことを言う文書過剰のコンサル型になることは十分に予想される。管理責任者に注意した。本審査は来週である。