新春雑記(H15年1月1週号)

1.新春のブラックユーモア
知人でコンサルタントをしているA氏と会った。彼は、元は建設の大手にいた経験がある。最近、F県のある建設会社がISO9001:2000を取得しようとしていたら、進行中の工事は適用外にしてくれと、県の担当者から要請がきたという。理由は、ISO9001:2000をとると、書類作成に溺れ、現場管理がおろそかになる、その工事は重要なので、そうなっては困るからだという。その県の職員は、過去、いろいろと悩まされ、こりていたのであろう。A氏は笑うに笑えないブラックユーモアであると言っていた。
しかし、そういう県の職員が企業に過剰な書類や偽記録を作らせることがある。本人はそれが何を意味するか、よく知っているのである。
私は、昨年、ある建設業4社の認証の手伝いをしたが、ISO9001:2000はごまかさないで、真面目に書類を作ろうということで、官庁提出書類は棚上げにした (このホームページの「審査/コンサル経験談」の「4社連続認証終わる:14年5月5週号」参照)。
例えば、一般的な施工計画書はやめ、製品実現計画書を作った。何故なら、施工計画書は、後追いで作る上に、公的な検査で指摘されないように作文することがあるからである。
かって、「日経コンストラクション」が建設業に、ISO9000に関するアンケートを取ったが、 7割が品質データは改ざんであるという回答であった。

年末、ある有名な審査員の体験講演を聞いたが、大体、ISO9000をうまく使って成功している企業が2から3%で、90%はただとっただけ、残りは撤退を覚悟しているという。
ISO9001:2000にも問題がある。しかし、はさみは使いようである。それは知恵から生まれる。知恵がある会社は、もともと、ISO9001:2000と関係なく業績が上がる。知恵のある会社はISO9001:2000もうまくとるから、効果が出る。実に単純な理屈である。

2. 経営者責任への要求は2000年版で増加していない。
年末、経営責任者向けのある審査員の講演を聞いたが、そこで、「2000年版は94年版の6倍、要求が増加した。」と言っていた。これは間違いで「要求の説明が細かくなった。」というべきである。むしろ、品質目標の設定、資源の提供は、「確実にする」となり、下部に委譲できるように軽減されている。2000年版で追加された顧客志向も、下部に委譲すべき内容である。また、品質マネジメントシステムの策定要求も、「当社はISO9001:2000の要求通りのシステムを策定する。」と品質マニュアルで宣言すれば終わりである。
問題は、94年版の要求はあいまいな点が多いため、経営者責任が常識レベルさえもやっていなくても認証された。しかし、2000年版で詳細になったので、解釈の幅はすくなくなり、94年版で正しく理解していない経営責任者の仕事は2000年版では増加することになろう。
例えば、マネジメントレビューであるが、94年版で内部監査の報告に捺印するだけだったり、マネジメントレビュー会議で議論した後、経営責任者がその議事録に判を押すだけだったり、認証を得ている経営責任者は大変である。

私は94年版から、マネジメントレビューは社長の個人的な孤独な仕事であるとして、内部監査の報告書、予防処置の報告書、品質会議議事録などの参考情報を明記するようにし、マネジメントレビュー記録書は、社長の作成印だけであった。また、社長が、どういうレビュー内容を書いたらよいかと相談を受けたときは、よく「最近、投資したり、あるいは計画したりしたことはありませんか。専門家を採用していませんか。新しい装置や機械を購入したいと思っていませんか。」と聞くことにしている。そうするとネタが必ず出てくる。資源の必要性やプロセスや製品改善である。それで認証をしてきた。だから、2000年版への移行対応でも全く、変化がない。
審査員も中小企業では、インプットだとかアウトプットと英語で言わず、こういう聞き方をすべきである。通常の経営責任者なら、やっていることであるが、マネジメントレビューというなれない英語に惑わされ、何か新しいことをするのかという誤解から、94年版で議事録の捺印などのごまかしですませることになってきたのである。コンサルや審査員の間違った解釈による指導にも責任がある。2000年版も同じ解釈間違いをすべきでない。
質問に英語の多い審査員は、規格の棒読みで、経営実務を知らないから、仕方がないかもしれない。

3.プロセスアプローチは間違って審査に用いられている。
最近、審査で管理者に「貴方の仕事のインプット、プロセス、アウトプットを説明してください。」と質問する審査員が増えているという。「貴方の業務を最初から終わりまで説明してください。」ですむ質問であるのに、おかしな聞き方をするなと思っていたら、その理由は2000年版がプロセスアプローチを強調しているからだという。だから、質問にプロセスという英語を無理に入れている。全くのナンセンスである。プロセスアプローチとは全く関係がない。
ISO9001:2000がプロセスアプローチなら、以前の94年版のアプローチは何アプローチなのか。それすら知らないで、偉そうに言う姿勢は相変わらずである。ここにも英語を棒読みにする審査員がいる。これは、規格の説明のあいまいさにも原因があるが、プロセスアプローチの原点であるトヨタ生産方式を知らない日本人がいかに多いかを示している。ノーベル賞の田中さんの偉業を、外国から知らされて、始めて知るという愚と同じである。外国人のほうがよく勉強している。
ある人から、プロセスアプローチがよく分からないという質問があったので、トヨタ方式を用いて射説明したら、よく理解できたと回答をもらった。