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1.S社での審査状況
建築業のS社は、昨年12月に、2000年版移行の書類審査を受審した。その際、K審査機関のZ審査員から「『文書の変更の識別』とは、文書の変更された箇所に、それがわかる識別表示を行う(例えば、削除箇所を二重線で消したり、追加箇所に下線を表示したりする等)ことである。」との指摘を受けた。
S社では、94年版のときから、各文書の巻末に「改定履歴表」を設けて、そこに「3.の1」表中(6)の"品質保証部"を"品質管理部"に変更」というように具体的な変更内容を記述している。しかし、Z審査員の説明は、「その方法は、94年版の4.5.3で認められていた『変更の性質を適切な添付文書で明確にする』(巻末の改定履歴表は添付文書との解釈?)であるが、2000年版は、これは削除され「添付文書での明確化」を認めていない。あくまでも、変更されたその箇所への識別表示が必要である。」とのことであった。
この問題は、2000年版の4.2.3のc)の「文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。」の要求の解釈に関するトラブルである。
2.Z審査員の間違った説明に対するコメント
(1)削除の理由の矛盾
94年版から削除されたのは、正確には「その文書中又は適切な添付文書」で、「その文書中」も含め2つの方法が削除されている。したがって、「添付文書での明確化」だけでなく、二重線・下線方式という「その文書中に明確にする」方法も、同様に2000年版では認められないことになる。「その文書中」の文字を見逃した単純ミスが拡大してしまった。
(2)「変更の識別」と「変更の性質」の明確化との混同
@Z審査員の間違った対応
Z審査員は、下表のような対応をしている。しかし、文書の変更の識別は「可能な場合」だけでなく、全部必要である。このように、間違った対応となっている。ISO9001:1994の4.5.3項は、「最初に審査・承認をした機能が、変更の審査・承認を行うこと」も含め、厳密には、ISO9001:2000では削除されていて、該当する要求がない。
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ISO9001:2000 4.2.3
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ISO9001:1994
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| c)の「文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別」 |
4.5.3の「可能な場合には、変更の性質をその文書中又は適切な添付文書(attachments)で明確にすること」 |
A正しい対応
次のように、文書の変更の識別は対応する文章が全く異なる。
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ISO9001:2000 4.2.3
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ISO9001:1994
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| c)の「文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別」 |
4.5.2の「文書の最新版(現在の改訂版のこと)の状態を明確にする台帳(list)又は同等の文書の管理手順を定め――――」 |
「変更の『性質』」とは「材質変更」、「工程変更」などのことをいう。「図番の枝番管理」などの「変更の『識別』」と全く異なる。「性質」についてはISO9001:2000に要求がない。
S社の「巻末履歴」は、94年版で言うところの「台帳list」方式(添付文書attachmentsではない)の1つで、台帳は文書と一体であり、これは文書中での変更識別方法の1つである。「台帳list」は2000年版では消え、より企業側の選択肢が広くなった。
(4)二重線方式の問題点
Z審査員の二重線・下線方式は、何回も修正が続くと文書が見難くなり、読み間違いを起こしやすく、特に図面などは実害が大きい。ISO9001の87年版(初版)時代は、二重線・下線方式が多かったせいか、「4.5.2文書の変更・改訂」に「相当回数の変更が行われた後には、文書を再発行すること。」というshall要求があった。しかし、ITの進歩で、図面などは、変更の都度、きれいな改訂図面を再発行するのが普通となった。当然、94年版ではこの「再発行要求」は削除された。
(5)代替案発想の欠如
ISO9001:2000の序文に、「文書の画一化がこの規格の意図でない」とあり、名著「中小企業のためのISO9000:TC176よりの助言」には、「この規格は文書変更について要求しているが、その方法までは規定していない。この規格の柔軟性を生かし、官僚主義と無駄なコスト追加となる方法を避けるべきである」としている。Z審査員はまさにこのISO本部の趣旨の違反をしている。
Z審査員の言うのも1つの方法であり、台帳(list)で識別をするのも1つの方法であり、IT文書のように上書き方式もあり、いろいろ選択肢がある。どれもshall要求を満たしている。企業側が効率を考えて選択すればよい(このホームページの「審査/コンサル経験談」の平成14年7月1週号「あるサーベイランスシーン・その4」参照)。
悪いことにZ審査員の「推奨する」二重線・下線方式の代替案は、いろいろな選択肢の中では最悪で、ISO9000の歴史で、その害を証明した方法である。
これはZ審査員個人だけの間違いでなく、建築関係の審査員にはこの間違った解釈が多いという。2000年移行に際し、こういうトラブルに直面する建築業が増加するだろう。
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