K審査員の企業システムへの悪影響(H15年2月2週号)

1.精美堂のクレーム
昨年末、精美堂のホームページ(http://www.ds-seibido.co.jp)に、審査機関に提出したK審査員へのクレームが全文掲載された。もちろん、審査員名は匿名であるが、高圧的な審査員の特性が生々しく全部出揃っていて、K審査員だけでない一般性がある。精美堂では、このクレームをK審査員が受けても、K審査員は変わらないであろうと言っていた。底に深刻な理解能力の問題があるからである。

2.K審査員による審査の不適合の扱いと「製品」の意味の混乱
精美堂では、10項目以外に、K審査員から、「審査で指摘されたことは、『不適合品管理』に該当するので、企業側は『不適合品報告書』と『不適合品対策書』を書くべきだ。」と要求された。理由は、審査員は、顧客の代表で来ているから、審査員が指摘したことは、顧客の不適合だというわけである。精美堂は二者審査でないのでとりあわなかったとのこと。
K審査員には、「不適合製品の管理」で扱う不適合製品とは、顧客の製品要求事項の不適合であることが理解できない。K審査員は「顧客の返品は契約内容の廃棄」であると主張し、返品の手直し、廃棄などの処理はおかしいと言っていたという。

3.A社でのK審査員の指摘
この精美堂の話を聞いた後、私は中小の調査会社A社の2000年移行支援に行った。A社の「製品」は「調査報告書」(業界では「成果品」と言う)である。驚いたことに94年版で、審査上の不適合指摘を「不適合品報告書」と「対策書」に書いていた。私は「これは顧客の製品要求事項の不適合でないので、システムが混乱していますね。」と言って、これを書かせた審査員の名前を聞いたら、また、驚いた。審査員は、K審査員であった。
A会社は、基礎的な理論武装が弱かったのか、精美堂と反対に、このK審査員の言う通りに従った。結果は、「不適合品報告書」のシステムが完全に崩壊していた。
しかも、顧客クレームの不適合品識別で、「顧客で発見した当社責任の不適合品は成果品が顧客先にあるため、識別できない。」という変な文章が審査員の要求で書かされていた。これも精美堂でK審査員が指摘した「顧客返品は契約内容の廃棄だ。」という間違いと関連している。クレーム返品の処理はどうするのか、良品と混在しないような管理手順はどうするのか、についてのA社の理解と関心はゼロとなってしまった。この場合、もし、追記で書くなら「顧客で発見した当社責任の不適合品を、顧客が廃棄するときは、『不適合品報告書』にその旨を明記する。」というのが正しい書き方である。

4.A社の無駄な手順書の作成
精美堂は、「ホチキス止めの手順書を書け。」とK審査員がしつこく言われた。精美堂はナンセンスな文書化要求なので最後まで受入れなかった。しかし、A社では、94年版の「4.15 取扱い、保管」の項では、拒否できなく、報告書用の書類の扱いで次のようにつまらない手順の修正追加となった。

(1)最初の文
「用紙類、表紙類などは、総務部担当が、汚れ、破れのないように、取扱い、当社、保管庫に保管する。途中の報告書類は、各業務担当が汚れ、破れのないように取扱う。」

(2)K審査員に指摘されて修正した文
「表紙類…総務部担当が、手が汚れていないことを確認した後、汚れ・破れがないように取扱い、総務部保管棚に保管する。
用紙類…取扱者が、手が汚れていないことを確認した後、汚れ・破れがないように取扱い、総務部保管棚に保管する。途中の報告書類は、各業務担当が汚れ、破れのないようにクリアファイルに入れて取扱う。
図面用紙類…取扱者が、手が汚れていないことを確認した後、汚れ・破れがないように取扱い、設計課図面保管棚に保管する。途中の図面用紙類は、各業務担当が汚れ、破れのないように取扱い、図面筒に入れて保管する。」

(1)と(2)の比較で、ナンセンスな文書増加であることが分かるであろう。精美堂が相手にしなかったホチキスレベルに当たる文書化をA社はしてしまった。

5.企業防衛の差
K審査員に対する姿勢が、精美堂とA社で、百八十度、異なっている実例である。A社は審査料を支払いながら、システム崩壊という悪影響をこうむった。ISO9000先進国のイギリスのセドン氏は、著書「品質の追求」の最後文で次のように述べている。

「正しい審査員を選択することを期待する。そして、その上に、次のオスカーワイルドの言葉を想起せよ。『愚かなものほど罪なものはない。』」

精美堂のホームページを見た企業からメールで問い合わせが来た。それは、その企業に審査に来る審査員の頭文字がKであるというので、同一人であれば選択を間違えることになるからだ。幸い、正式名では異なるのでその旨、精美堂はメールで回答したという。